院長コラム
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院長コラム2026/01/13
白衣高血圧と仮面高血圧を徹底解説
〜病院だけではわからない“本当の血圧”とは?〜
■ はじめに
高血圧の診断は、従来「診察室で測った血圧」が深く関わっていました。しかし近年、診察室血圧だけでは患者の真のリスクを正確に評価できないことが明確になってきています。
特に重要なのが
•白衣高血圧
•仮面高血圧という2つの“隠れ高血圧”です。
これらは単なる測定誤差ではなく、心血管イベント(心筋梗塞・脳卒中・心不全)発症に直接影響する病態であり、循環器専門医の観点からも極めて重要です。■ 白衣高血圧とは
白衣高血圧とは、
「診察室では高血圧だが、家庭血圧は正常」
という状態です。● なぜ起こるのか:交感神経の急激な亢進
医療環境では、緊張 → 交感神経活性化 → 末梢血管収縮 → 血圧上昇
という反応が起きます。特に高齢者・不安傾向の強い方では顕著で、20〜30mmHg以上上がる方もいます。
臨床感覚としては中でも中高年の女性に多い印象です。● 白衣高血圧は決して“良性”ではない
近年の複数の研究では、
•将来、高血圧へ移行しやすい(進行率約30〜40%)
•動脈硬化(脈波伝播速度PWVなど)が徐々に悪化する
•心血管イベントのリスクが正常血圧より高いことが示されています。
一言で言うと、
「白衣高血圧=血管がストレスに弱い(反応性が高い)タイプ」
であり、治療・経過観察を適切に行うべき病態です。
仮面高血圧とは
仮面高血圧は、
「診察室では正常だが、家庭または仕事・夜間で高血圧となる」
状態を指します。白衣高血圧とは逆で、最も見逃されやすく最も危険 と考えられているタイプです。
● よくある3つのパターン
① 朝だけ高い(モーニングサージ)
起床直後は交感神経が一気に活性化し血圧が急上昇しやすい。
心筋梗塞や脳卒中が朝に多い理由の一つ。② 日中のストレスで高くなる
仕事・家庭環境・緊張の持続などにより、診察室より高値になるケース。
若年〜中年層にも多い。③ 夜間高血圧
睡眠中の血圧が高い状態を指し、通常は夜間に血圧は10〜20%低下する(dipperと呼ばれます)ものの
・Non-dipper
・Riser (逆に夜間血圧が上がるパターン)は心血管リスクが極めて高いことが示されています。
● 仮面高血圧が危険な理由
国内外の大規模研究では、
•心血管イベント発症率が本態性高血圧より高い
•左室肥大(心臓の筋肉が分厚くなる)の進行が早い
•腎障害が進行しやすい
•心不全(とりわけ拡張不全タイプ)と関連が強いと報告されています。
特に拡張期血圧(DBP)高値が続く人は
→ 血管硬化の進行
→ 左室コンプライアンス低下
→ 弁膜症や心不全の発症リスク増大
にもつながるため、早期介入が重要です。
■ 真の血圧を知るには「家庭血圧」が必須
診察室血圧は“瞬間値”であり、環境の影響を強く受けます。
一方、家庭血圧は日常の血管負荷を最も正確に反映する指標として世界的に推奨されています。● 正しい家庭血圧の測定方法
•朝起床後1回、夜就寝前1回
•椅子に座り、腕は心臓の高さ
•測定前に 1〜2 分安静
•足は組まない
•最低7日間連続で記録し平均値を評価測定誤差の約8割は“測り方の問題” と言われるほど、姿勢・安静が重要です。
■ 当院でのアプローチ:隠れ高血圧を可視化し、リスクを最小化する
当院では、白衣高血圧・仮面高血圧のような“隠れた循環器(心臓と血管)リスク”を正確に把握し、個々に最適化した治療を行っています。
● ① 家庭血圧の記録・指導
患者さんごとに測定状況を確認し、測り方を徹底的に指導します。
● ② 血圧プロファイルに基づく治療
•生活習慣の最適化
•降圧薬の種類・量の微調整
•モーニングサージ・夜間高血圧を考慮した「時間治療」特に夜間高血圧では、睡眠時無呼吸症候群(SAS)の評価も欠かせません。
■ まとめ
白衣高血圧・仮面高血圧は、
「診察室だけではわからない、真の血圧リスク」
を映し出す重要な概念です。日常の血圧を知ることが、未来の健康を守る第一歩です。
心臓や血管は自律神経が多く分布しており、少しのストレスや緊張でも変化します。
私も日々の診療において少しでも、患者さんにリラックスしていただけるように意識して参ります。お困りの際はお気軽にお声がけください!
参考文献
•日本高血圧学会「高血圧治療ガイドライン2019(JSH2019)」
•Mancia G, et al. European Heart Journal. 2013;34:2159–2219.
•Pickering TG, et al. Hypertension. 2002;40:795–796.
•Banegas JR, et al. N Engl J Med. 2018;378:1509–1520.
•Kario K, et al. Hypertension Research.
•O’Brien E. Masked Hypertension. J Clin Hypertens.
文責:茂澤メディカルクリニック南千住
院長 茂澤 幸右(糖尿病学会所属・循環器内科専門医)