糖尿病の原因

糖尿病の主な原因は前述のように⼤きく分けて「体質(遺伝)」と「⽣活習慣」の2本柱です。特に糖尿病の⼤半を占める2型糖尿病は「遺伝的な素因」に「⾷⽣活の乱れや慢性的な運動不⾜」が加わることで発症リスクが格段に⾼まります*¹。

糖尿病になりやすい体質(遺伝的要因)

血縁者に糖尿病の方がいる場合はもともと「インスリンの分泌量が少ない体質」 が備わっている可能性があります。
先述の通り日本人は欧米人に比べてインスリンの分泌能力が低く、これは「もともと燃費の良いエンジンを持っている」ようなものです。しかし現代のように高カロリーな食生活が続くと、燃費の良いエンジンでは処理しきれず、それ以上に血糖値が上がってしまいます。
つまり「遺伝的な体質という下地があるところに、生活習慣という上塗りが加わる」 ことで糖尿病がより発症しやすくなるのです*²。


生活習慣と糖尿病

2型糖尿病は生活習慣病の代表格です。
特に以下のような生活習慣が糖尿病のリスクを大いに高めます。

・欧米のような糖質の豊富な食事(白米・パン・麺類・甘い飲み物の摂取が多い)
・慢性的な運動不足(カロリーを消費しないため、糖が体に蓄積する)
・肥満(特に内臓脂肪が多いとインスリンの効きが悪くなり、悪循環へ)
・ストレスや睡眠不足(ホルモンバランスが乱れ、血糖値が上昇しやすくなる)

特に「インスリンの効きが悪くなる状態(インスリン抵抗性)」は糖尿病の発症に大きく関係しています。これは「鍵と鍵穴の関係」をイメージすると理解しやすいです。 健康な状態ではインスリン(鍵)が細胞の受容体(鍵穴)にピタッとはまり、血糖が細胞に取り込まれます。しかしインスリン抵抗性が高くなると「鍵穴が錆びてしまい、鍵がうまく入りづらく回らなくなる」ような状態に陥り有効に代謝されずに血糖値が上昇してしまうのです*³。


ここがポイント

糖尿病の発症は遺伝的な要素だけで決まるわけではなく、日々の生活習慣が大きく影響します。そのため、当院では「血糖値の推移だけをスポットで評価するのではなく、患者さん個人の家族歴や生活様式に合わせてインスリンの分泌能力や抵抗性なども総合的にチェック」し、個々に合った生活習慣改善のアドバイスを行っています。

  • *¹ 世界糖尿病連合(IDF)「Diabetes Atlas 10th edition」2021年
  • *² Kahn SE, et al. "The Importance of β-cell Failure in the Development and Progression of Type 2 Diabetes." N Engl J Med. 2009.
  • *³ DeFronzo RA, et al. "Pathophysiology of Type 2 Diabetes Mellitus." Med Clin North Am. 2004.