私の解説記事を読んでいただいた方にはいかに糖尿病が大きな血管(心臓も血管の一部と考えられます)から小さな血管(腎臓や網膜の毛細血管)、さらには末梢神経に対して悪影響を及ぼすかは理解いただいた方がおります。
普段の診療をしていると糖尿病が心臓や腎臓にとって悪であることは皆さんある程度認識しているものの、もう一つの大きな医療課題である‘癌’に対してはあまり理解が及んでいない方も多いです。
糖尿病と「がん」は一見別の病気のように思えますが、実は深い関係があります。糖尿病患者はがんのリスクが高まることが研究で示されています*¹。
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・なぜ糖尿病でがんリスクが上がるのか?
高血糖:慢性的な高血糖が細胞の老化やDNAの損傷を促進
インスリン抵抗性:インスリンの増加が細胞の異常増殖を促す可能性
慢性炎症:糖尿病に伴う炎症ががん発生の一因に
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・特にリスクが上がるがんを下記にあげます。
すい臓がん
肝臓がん
大腸がん
乳がん
糖尿病の管理ががん予防にもつながることを知っておくことが大切です。血糖値のコントロール、適度な運動、バランスの良い食事は、糖尿病だけでなくがんのリスク低減にも有効です。
特に上記のがんのうち、すい臓がんはステージが進行し、全身に黄疸が広がることで発見されることでも有名です。また大腸がんも近年食事の欧米化が進んでいる本邦では男女ともに罹患率は増え続け臓器別がんでもトップ3に入ります。
血液検査に加えて超音波検査などの定期検査を組み合わせることで早期発見につながることも少なくありません。
「心臓病」と「がん」という2大死因に糖尿病は密接に関与しているのです。
- *¹ Giovannucci E et al. Diabetes and Cancer: A consensus report. CA Cancer J Clin. 2010.