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院長コラム

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    2026/03/31

    降圧薬を飲んでも血圧が下がらない…? ~見逃されがちな「二次性高血圧」とは~

    「薬を飲んでいるのに血圧が下がらない」

    外来で非常によくある相談です。

    実際に
    ・2種類以上の降圧薬を飲んでいる
    ・それでも140/90を超えている

    こういったケースでは、単なる生活習慣だけでなく
    “別の病気が隠れている可能性”を考える必要があります。

    それが
    二次性高血圧です。

    高血圧の約90%は生活習慣などが原因の「本態性高血圧」ですが、
    残りの約5〜10%は原因が明確な「二次性高血圧」です。

    そしてこの二次性高血圧は、
    原因を治療することで血圧が劇的に改善する可能性がある
    という重要な特徴があります。

    今回は循環器内科の専門医の視点から、私も高血圧の患者さんを診察する際に特に若い方の場合は常に二次性高血圧を頭に鑑別にあげながら考えています。

    「塩分過多や生活習慣などに特に問題なく、若いのに血圧が高いときに最初に除外しなければならない病気」「薬を飲んでも血圧が下がらないときに忘れてはいけない病気」
    について解説します。

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    「薬が効かない高血圧」とは?まず疑うべき状態

    まず重要なのは、
    本当に「治療抵抗性高血圧」なのかを見極めることです。

    一般的に

    ・3剤以上の降圧薬を使用している
    ・それでも血圧がコントロール不良

    この状態を
    治療抵抗性高血圧と呼びます。

    ただし実際の外来では

    ・薬を飲み忘れている
    ・塩分摂取が多い
    ・家庭血圧が測れていない
    ・白衣高血圧

    といった“見かけ上のコントロール不良”も多く存在します。

    そのため当院ではまず

    ・家庭血圧の確認
    ・服薬状況
    ・生活習慣(特に塩分・体重)

    を丁寧に確認します。

    それでも明らかに血圧が高い場合、
    次に考えるのが

    👉 二次性高血圧の存在です。

    もともと複数の降圧薬を内服していて、当院に転居や紹介で通院された患者さんの中でも血圧が不十分な場合は上記を考えながら、二次性高血圧の可能性はないのかを探っていく必要があります。

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    見逃してはいけない「二次性高血圧」の代表疾患

    二次性高血圧には多くの原因がありますが、
    特に重要で代表的な疾患を解説していきます。

    ① 原発性アルドステロン症

    最も頻度が高く、
    高血圧患者の5〜10%程度に存在すると言われています。

    特徴

    ・血圧が下がりにくい
    ・若年〜中年でも発症
    ・低カリウム血症(必ずしも出ない)

    アルドステロンというホルモンが過剰になることで

    👉 ナトリウム・水分が体に溜まる
    👉 血圧が上昇する

    状態になります。
    血液検査でアルドステロンやレニンなどのホルモンの精査に加えて、必要に応じてCT検査による副腎の形態評価、確定診断には総合病院で負荷検査などの専門性の高い検査が必要になります。

    ② 腎性高血圧(腎動脈狭窄など)

    腎臓の血流が低下すると

    👉 「血圧を上げろ」という指令が出る

    ことで高血圧になります。

    特徴

    ・急に血圧が悪化
    ・高齢者で多い
    ・動脈硬化と関連

    ③ 睡眠時無呼吸症候群(SAS)

    実は非常に多い原因です。

    ・いびき
    ・日中の眠気
    ・肥満

    がある方では要注意です。

    無呼吸により

    👉 交感神経が過剰に働く
    👉 夜間・早朝の血圧上昇

    が起こります。
    ポリソノグラフィという睡眠中の検査をすることで重症度をはかります。
    その上で適応があればCPAPという呼吸時に装着する機械で呼吸のサポートを行う治療を保険で受けられます。

    ④ その他

    ・褐色細胞腫
    ・クッシング症候群
    ・甲状腺機能異常

    などの内分泌疾患も原因になります。
    いずれも詳しいホルモン検査や画像検査あ必要であり、診断をつけるのには内科専門医によるフォローが必要になります。

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    見逃さないための「サイン」と外来での見極め

    では、どんな時に疑うべきか。

    外来では以下のポイントを重視します。

    要注意のサイン

    ・若年発症(40歳未満)
    ・急激な血圧上昇
    ・3剤以上でもコントロール不良
    ・低カリウム血症
    ・夜間高血圧

    実際にあった外来の実例

    「50代男性、BMIやや高め、降圧薬2剤でも150台」

    このケースでは

    👉 原発性アルドステロン症
    👉 睡眠時無呼吸

    をまず疑います。

    一方で

    「70代で急に血圧が悪化」

    なら

    👉 腎動脈狭窄

    も併せて考えます。

    このように

    年齢・背景・経過で原因を推測することが重要です。

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    原因を見つければ「治る高血圧」もある原因を見つければ「治る高血圧」もある

    二次性高血圧の最大のポイントはここです。

    👉 原因に対して治療ができる

    という点です。

    原発性アルドステロン症

    ・手術
    ・ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬

    で改善

    腎動脈狭窄

    ・カテーテル治療
    ・薬物治療

    睡眠時無呼吸

    ・CPAP治療

    で血圧が改善するケースも多いです。

    降圧薬だけでは不十分な理由

    原因がある場合

    👉 「水道の蛇口を閉める」治療ではなく
    👉 「水圧が上がる原因」を止める必要があります

    つまり

    根本原因を見つけることが最も重要です。

    当院の考え方

    当院では

    ・血圧がなかなか下がらない
    ・薬が増えてきている

    こういった方には

    単純な薬の追加ではなく

    👉 「なぜ下がらないのか」

    を重視して診療しています。

    必要に応じて

    ・ホルモン検査
    ・睡眠時無呼吸の評価
    ・専門医への連携

    を行いながら

    原因にアプローチする診療を行っています。

    まとめ

    降圧薬を飲んでも血圧が下がらない場合

    それは

    👉 「薬が効かない体質」ではなく
    👉 「別の病気のサイン」

    かもしれません。

    特に

    ・薬が増えている
    ・コントロールが悪い

    こういった場合は

    一度しっかり評価することが重要です。

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    参考文献

    日本高血圧学会 高血圧治療ガイドライン2019
    Funder JW et al. Endocrine Society Guideline, J Clin Endocrinol Metab. 2016
    Rimoldi SF et al. Lancet. 2014
    Calhoun DA et al. Circulation. 2008
    日本循環器学会 ガイドライン

    このコラムの執筆者

    院長画像

    院長:茂澤 幸右
    糖尿病学会所属・循環器内科専門医


    循環器内科専門医として、糖尿病・高血圧・脂質異常症などの生活習慣病診療に従事。
    血糖や血圧の管理だけでなく、将来の心筋梗塞や心不全を防ぐ視点を大切に、
    日々の外来で患者さんと向き合っています。
    このコラムでは、健診結果の見方や最新の医療情報などを、
    外来で実際にお話ししている言葉で分かりやすく解説しています。

    【経歴】
    日本医科大学医学部 卒業
    日本医科大学大学院医学研究科(循環器内科学)修了

    【資格】
    医学博士
    循環器内科専門医
    内科認定医

    【所属学会】
    日本内科学会
    日本循環器学会
    日本心臓病学会
    日本糖尿病学会
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