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院長コラム

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    2026/01/13

    血圧は“下の値(拡張期血圧)”も大切です

    〜拡張期血圧と血管・心臓・弁膜症の深い関係〜

    健診で「血圧が少し高い」と言われても、
    多くの方は “上の血圧(収縮期血圧)”だけに意識が向きがちです。

    しかし、私の専門とする循環器内科の臨床ではむしろ
    “下の血圧(拡張期血圧)”こそ早期の異常に気づくための重要サイン
    であることを強く感じています。

    南千住の患者さんでも、拡張期血圧が高めの段階で相談していれば、
    心筋梗塞・脳卒中・心不全を防げたケースも少なくありません。

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    ■ そもそも拡張期血圧とは?

    心臓が拡張(休んでいる)時に血管へかかる圧力のことです。

    心臓は全身から血液が集まってきて(風船で例えるとふくらんだ状態)が拡張で、風船を縮ませて中のたまった血液を全身に送り返すことを収縮と呼びます。
    基準は家庭血圧で85mmHg以上、診察室で90mmHg以上(JSH2023)。

    拡張期血圧は

    血管の硬さ(コンプライアンス低下)
    末梢血管抵抗
    動脈硬化の進行度
    を強く反映します。

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    ■ 拡張期血圧が高い=血管が硬い=心臓の壁も硬くなりやすい

    ここが循環器内科として特に重要なポイントです。

    血管は心臓と“ひとつながり”の臓器であり、
    動脈硬化が進み硬くなると、その延長線上にある
    心臓のポンプ室である左心室の筋肉の壁も徐々に硬くなる(左室肥大・拡張障害) 傾向があります。

    ▼ 臨床でよく見る三段階の流れ

    1.拡張期血圧が高い(血管抵抗↑)
    2.左室肥大が進む(壁が厚く硬くなる)
    3.拡張障害 → 急激な心不全へ移行しやすくなる

    近年、拡張障害による心不全が高齢者心不全の中心となっており、
    拡張期血圧の上昇は、この病態の前段階として非常に重要です。

    ■ 弁膜症とも無関係ではない

    大動脈弁狭窄症は「高齢化×動脈硬化」によって進行します。

    拡張期血圧が高く、血管が硬い方は

    •大動脈のスティフネス(硬さ)が強い
    •心臓への負担が増す
    結果的に弁膜症の進行リスクが高まりやすい
    という傾向が臨床で見られます。

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    ■ 拡張期血圧が高い時のチェックポイント

    •家庭血圧が85mmHg以上 (100mmHg以上は要注意!)
    •頭重感・肩こりが強くなった
    •体重が増えてきた
    •睡眠の質が悪い
    •糖尿病・脂質異常症がある
    •階段で息切れしやすくなった(心不全の初期サインの可能性も)

    1つでも当てはまる方は、早めの評価をおすすめします。

    ■ 生活習慣病との関連は非常に深い

    拡張期血圧は
    • 糖尿病
    • 脂質異常症
    • 肥満(内臓脂肪)
    • 脂肪肝
    などの初期変化として最も敏感に反応する指標です。

    血糖・脂質・肥満が悪化 → 血管の炎症・硬化 → 拡張期血圧↑ → 心臓の壁が硬くなる
    という悪循環が生まれます。
    当院のある南千住地域でも、健診では正常範囲でも家庭血圧で悪化しているケースがよく見られます。

    ■ 当院で行うアプローチ

    •家庭血圧の丁寧な読み解き
    •食事(塩分6g未満)、体重管理、運動など生活改善指導
    •必要な方には早期の薬物治療
    •心エコーでの左心室肥大・拡張障害の評価 (心臓の筋肉の分厚さや物理的な波形から推測できます)
    •弁膜症の進行チェック(大動脈弁狭窄症など)
    循環器専門医として、
    血圧・血管・心臓を“一体の臓器”として総合評価しています。

    ■ まとめ

    •“下の血圧”は血管・心臓の健康を映す非常に重要な指標
    •拡張期血圧↑ → 血管が硬い → 心臓の壁も硬くなりやすい
    •心不全や弁膜症のリスクにつながる
    •家庭血圧85mmHg以上は要注意
    •健診で異常があれば早めの相談が最善
    •南千住で生活習慣病のかかりつけ医をお探しの方はぜひご相談を!

    参考文献

    1.日本高血圧学会 高血圧治療ガイドライン2023(JSH 2023)
    2.Franklin SS, et al. Circulation. 1997;96:308–315.
    3.Redfield MM, et al. “Burden of Systolic and Diastolic Ventricular Dysfunction in the Community.” NEJM. 2003.
    4.Owan TE & Redfield MM. “HFpEF epidemiology and outcomes.” NEJM. 2006.



    文責:茂澤メディカルクリニック南千住
    院長 茂澤 幸右(糖尿病学会所属・循環器内科専門医)