院長コラム
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院長コラム2026/03/04
血圧はどこからが高血圧?正常値と本当に危ないライン
血圧はどこからが高血圧?
正常値と本当に危ないラインを循環器専門医として解説します。健康診断で「血圧が少し高いですね」と言われた経験がある方は多いと思います。
外来でもよく聞かれる質問があります。
「血圧ってどこから高血圧なんですか?」
「140くらいならまだ大丈夫ですよね?」実はこの疑問、医学的にはとても重要です。
なぜなら血圧はあるラインを超えた瞬間に急に危険になるわけではなく、徐々に心臓や血管への負担が増えていくからです。
高血圧は、日本では約4300万人が該当すると言われています。
しかしそのうち実際に治療を受けている人は半分程度です。そして高血圧は、自覚症状がほとんどありません。
そのため、知らないうちに
心筋梗塞
脳梗塞
心不全
腎不全
といった重大な病気のリスクを高めてしまうのです。
今回は心臓と血管を対象とする循環器内科専門医の立場から、
血圧はどこから高血圧なのか
本当に危ない血圧はどのラインなのかについて、できるだけ分かりやすく解説していきます。
高血圧の基準はどこから?
まず、高血圧の定義を整理してみましょう。
日本高血圧学会のガイドラインでは
病院で測る「診察室血圧」が140 / 90 mmHg以上
で高血圧と定義されています。
しかし最近の高血圧管理では、
もう一つ重要な血圧があります。それが
家庭血圧です。
家庭血圧では
135 / 85 mmHg以上
が高血圧とされています。
これはなぜでしょうか。
理由はシンプルで
家庭血圧の方が日常の血圧に近いからです。
診察室では緊張して血圧が上がる
「白衣高血圧」が起きることがあります。逆に診察室では正常でも
自宅で高い「仮面高血圧」も存在します。(★白衣高血圧に関しては以前の記事で詳しく解説しています。)そのため現在は
家庭血圧を重視する管理が推奨されています。
一般的には寝ている間が副交感神経優位のため最もリラックスをしており、血圧が低い状態です。
起床後、トイレに行き、食事をとる前の血圧が起きている時間帯では理論上最も低い血圧になるとされており、血圧測定もそのタイミングで行ってもらいます。
血圧が高いと体の中で何が起きるのか
血圧が高い状態が続くと、
血管には常に強い圧力がかかります。イメージとしては
細いホースに強い水圧をかけ続けている状態
です。
最初は問題ありませんが、
長い年月が経つとホースは傷んできます。血管でも同じことが起こります。
血管の内側に傷がつき、
そこに・コレステロール
・炎症
・血小板などが集まり
動脈硬化
が進行していきます。
動脈硬化が進むと
・心筋梗塞
・脳梗塞
・心不全
・大動脈疾患などのリスクが高くなります。
特に日本では
高血圧と脳卒中の関係が非常に強い
ことが知られています。
心臓も分厚い筋肉で覆われたゴムボールのようなポンプですから、血管の延長です。
特に心臓内を隔てる4つの弁も1日約10万回開閉されるわけで、血圧が高い≒心臓や心臓の弁が傷むリスクが上がるということになります。
実は120を超えたあたりからリスクは上がる
多くの方が
「140未満なら大丈夫」
と思っているかもしれません。
しかし疫学研究では
115mmHgを超えるあたりから心血管疾患のリスクは徐々に上昇する
ことが示されています。
つまり
120
130
140と血圧が上がるにつれて
脳梗塞や心筋梗塞のリスクは段階的に増えていく
のです。
ただしここで重要なのは
全員が120未満を目標にするわけではない
という点です。
血圧の目標値は人によって違う
高血圧治療では
患者さんの年齢や病気によって目標血圧が変わります。
例えば
一般成人
130 / 80 未満75歳以上
140 / 90 未満糖尿病
慢性腎臓病
心血管疾患がある場合は、より厳格に管理することがあります。(収縮期血圧を130以下)
つまり血圧管理は
単純に正常か高血圧かを判断するものではなく
その人の将来のリスクを考えて決めていくものです。
■当院の考え方■
高血圧は
自覚症状がほとんどないまま進行する病気です。
しかし適切に管理すれば
脳卒中や心筋梗塞のリスクを大きく減らすことができます。
当院では
・家庭血圧の評価
・動脈硬化リスクの評価
・生活習慣の確認などを行い
一人ひとりに合った血圧管理
を提案しています。
健康診断で血圧が高いと言われた方や
最近血圧が気になっている方は
お気軽にご相談ください。
参考文献
日本高血圧学会
高血圧治療ガイドライン2024SPRINT Research Group
N Engl J Med. 2015Williams B et al.
Lancet. 2018このコラムの執筆者
院長:茂澤 幸右
糖尿病学会所属・循環器内科専門医
循環器内科専門医として、糖尿病・高血圧・脂質異常症などの生活習慣病診療に従事。
血糖や血圧の管理だけでなく、将来の心筋梗塞や心不全を防ぐ視点を大切に、
日々の外来で患者さんと向き合っています。
このコラムでは、健診結果の見方や最新の医療情報などを、
外来で実際にお話ししている言葉で分かりやすく解説しています。
【経歴】
日本医科大学医学部 卒業
日本医科大学大学院医学研究科(循環器内科学)修了
【資格】
医学博士
循環器内科専門医
内科認定医
【所属学会】
日本内科学会
日本循環器学会
日本心臓病学会
日本糖尿病学会