院長の生活習慣病コラム
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院長の生活習慣病コラム2026/08/24
なぜ内臓脂肪が増えると血圧・血糖・脂質が全部悪くなるのか——脂肪細胞が出す「毒素」の正体
はじめに——「お腹の脂肪」は、ただの脂肪ではありません
健診の結果を見て「また腹囲がひっかかった」「メタボって言われた」——そう言いながら、どこか他人事のように笑っている患者さんが外来に来ることがあります。
気持ちはよくわかります。お腹まわりが少し増えたくらいで、別に体調が悪いわけでもない。血圧もそこまで高くないし、血糖も「少し高め」程度。「まあ、太っているのは良くないんだろうけど」——そのくらいの認識でいる方がほとんどです。
しかし今日お伝えしたいのは、内臓脂肪は「ただの脂肪」ではないということです。
内臓脂肪は、じっとしていません。日々、様々な物質を血液中に放出し続けています。その中には血圧を上げるもの、血糖を悪化させるもの、血管を傷めるもの——つまり「毒素」とも呼べる物質が含まれています。
内臓脂肪が増えると血圧・血糖・脂質が「なぜか全部同時に」悪くなる——これは偶然ではありません。一つの原因(内臓脂肪)から、複数の生活習慣病が同時に引き起こされるメカニズムがあるのです。
今回はそのメカニズムを、できるだけ平易に、しかし正確にお伝えします。「なんとなく太っているのが悪い」から「だからこそ内臓脂肪を減らさなければ」という具体的な危機感に変わるきっかけになれば幸いです。
内臓脂肪とは何か——「同じ脂肪」なのに、なぜお腹だけ危ないのか
脂肪には「良い脂肪」と「悪い脂肪」がある
「脂肪」と一口に言っても、体の中には大きく二種類の脂肪があります。
皮下脂肪: 皮膚のすぐ下に蓄積される脂肪です。二の腕・太もも・お尻などに多く、つまめる脂肪です。保温・クッション機能があり、ある程度は体に必要な脂肪です。女性に多いのが特徴で、「洋ナシ型肥満」とも呼ばれます。
内臓脂肪: 腸・肝臓・膵臓などの腹腔内臓器の周囲に蓄積される脂肪です。お腹の「深いところ」に溜まるため、外から見てもつまめません。男性に多く蓄積しやすく、「リンゴ型肥満」とも呼ばれます。
同じ「脂肪」でも、この二つはまったく別物です。皮下脂肪は見た目には目立ちますが、実は心血管リスクとの関連は内臓脂肪ほど強くありません。一方、内臓脂肪は見た目ではわかりにくいのに、心血管リスクへの影響は段違いに大きい。
「体重は普通なのに生活習慣病になった」という方の多くは、この内臓脂肪が問題になっています。「隠れ肥満」と呼ばれるゆえんです。
なぜ内臓脂肪は「お腹」に溜まるのか
内臓脂肪が腹部に溜まりやすいのには、生物学的な理由があります。
腹腔内の脂肪細胞は、ストレスホルモンであるコルチゾールの受容体を多く持っています。コルチゾールは脂肪の分解を促すホルモンですが、慢性的なストレス状態では逆に腹部への脂肪蓄積を促進します。
また、加齢とともに性ホルモン(男性ではテストステロン、女性ではエストロゲン)が低下すると、皮下脂肪よりも内臓脂肪が優先的に蓄積されるようになります。「年をとるとお腹だけ出てくる」のはこのためです(コラム㉚参照)。
さらに、糖質・脂質の過剰摂取・運動不足・睡眠不足・過剰なアルコール摂取も、内臓脂肪蓄積を加速させます。
腹囲の基準値——「何センチ」から危ないのか
内臓脂肪の蓄積を簡便に評価する方法が、腹囲(ウエスト周囲径)の測定です。
日本のメタボリックシンドロームの診断基準では、腹囲が男性85cm以上・女性90cm以上が内臓脂肪蓄積ありの基準とされています。
「女性の方が基準値が大きいのはなぜ?」とよく聞かれます。女性は皮下脂肪がつきやすい体質のため、同じ腹囲でも内臓脂肪の割合が男性より少ない傾向があり、女性の基準値が大きめに設定されています。
ただし、腹囲だけで全てが判断できるわけではありません。BMIが正常でも腹囲が基準以上の人(隠れ肥満)もいれば、腹囲が基準内でも内臓脂肪CT(腹部CTで内臓脂肪面積を直接測定する方法)で内臓脂肪過多が判明するケースもあります。
「腹囲は大丈夫だから」と安心しすぎず、血液検査の数値と合わせて総合的に評価することが重要です。
脂肪細胞が出す「毒素」の正体——アディポサイトカインという概念 脂肪細胞は「貯蔵庫」ではなく「工場」だった
脂肪細胞は「貯蔵庫」ではなく「工場」だった
かつて脂肪細胞は、余ったエネルギーを中性脂肪として蓄える「貯蔵庫」に過ぎないと考えられていました。ところが1990年代以降の研究で、脂肪細胞が様々な生理活性物質を産生・分泌していることが明らかになりました。
これらの物質をまとめてアディポサイトカイン(adipocytokine)と呼びます。「アディポ(脂肪)」+「サイトカイン(細胞が分泌する信号物質)」の造語です。
アディポサイトカインには、体に良い働きをするものと、体に悪い働きをするものがあります。そして内臓脂肪が増えると、「良いもの」が減り「悪いもの」が増えるというアンバランスが生じます。これが、内臓脂肪が「毒素工場」と化すメカニズムです。
「良いアディポサイトカイン」——アディポネクチンの低下
アディポネクチンは、脂肪細胞が分泌する最も重要な「善玉」アディポサイトカインです。
アディポネクチンには以下の働きがあります。
・インスリン感受性を高め、血糖を下げる
・血管内皮細胞を保護し、動脈硬化を抑制する
・肝臓での脂質合成を抑え、中性脂肪を低下させる
・抗炎症作用を持つ
つまりアディポネクチンは、血糖・血管・脂質を同時に守る「体の守護神」とも言える物質です。
ところが、内臓脂肪が増えると、このアディポネクチンの分泌が低下します。内臓脂肪が多いほどアディポネクチンが少ない——これは複数の研究で一貫して示されています。「内臓脂肪が増えると血糖・血管・脂質が全部悪くなる」理由の一つは、この守護神の喪失にあります。
「悪いアディポサイトカイン」——TNF-α・IL-6・レプチンの過剰分泌
内臓脂肪が増えると、以下の「悪玉」アディポサイトカインが過剰に分泌されます。
TNF-α(腫瘍壊死因子):
本来は感染・炎症時に産生される免疫物質ですが、内臓脂肪から慢性的に分泌されると、インスリンの働きを妨害します(インスリン抵抗性の増大)。また血管内皮細胞に炎症を引き起こし、動脈硬化を促進します。IL-6(インターロイキン-6):
慢性炎症を維持する物質です。内臓脂肪からのIL-6過剰分泌は、肝臓でのCRPという炎症マーカーの産生を増やします。「内臓脂肪が多い人はCRPが高い」というのはこのためです。慢性的な低レベルの炎症が、血管を少しずつ傷め続けます。レプチン(過剰分泌):
レプチンは本来「満腹シグナル」として食欲を抑える物質ですが、内臓脂肪が増えると過剰分泌され、受容体が鈍感になります(レプチン抵抗性)。「食べても満腹感が得られにくくなる」という悪循環が生まれ、さらに食べ過ぎてしまう——肥満が肥満を呼ぶメカニズムです。PAI-1(プラスミノーゲン活性化因子阻害物質):
血栓を溶かす機能を抑制する物質です。内臓脂肪からのPAI-1過剰分泌によって、血液が固まりやすい(血栓形成しやすい)状態になります。心筋梗塞・脳梗塞リスクを直接高める物質です。内臓脂肪は「慢性炎症の震源地」
これらの悪玉アディポサイトカインが引き起こすのは、「慢性低レベル炎症」という状態です。発熱や痛みを伴うような急性炎症ではなく、自覚症状がないまま血管・臓器がじわじわと傷み続ける「静かな炎症」です。
この慢性炎症こそが、内臓脂肪と心血管疾患・糖尿病・高血圧を結びつける共通のメカニズムです。内臓脂肪が「ただの脂肪」ではなく「炎症の震源地」と呼ばれるゆえんです。
血圧・血糖・脂質が「全部同時に」悪化するメカニズム
なぜ「全部同時に」悪くなるのか
「血圧も高い、血糖も高い、中性脂肪も高い、HDLも低い」——健診でこれだけの異常が一度に指摘されて、戸惑った経験はありませんか?
「運が悪かっただけ?」「体質?」——いいえ。これらは別々の病気が偶然重なったのではなく、内臓脂肪という一つの原因から同時多発的に引き起こされているのです。
血圧への影響——三方向からの血圧上昇
内臓脂肪は、以下の三つの経路で血圧を上昇させます。
①レニン・アンジオテンシン系の活性化:
内臓脂肪組織はアンジオテンシノーゲンを産生します。これが肝臓・腎臓で処理されてアンジオテンシンIIという強力な血管収縮物質になります。アンジオテンシンIIは血管を収縮させ、腎臓でのナトリウム貯留を促し、血圧を上昇させます。②交感神経の慢性活性化:
内臓脂肪からのレプチン過剰分泌は、脳の視床下部を刺激し、交感神経を慢性的に活性化します。交感神経が優位になると心拍数・血管抵抗が上昇し、血圧が高止まりします。③インスリン抵抗性を介した血圧上昇:
TNF-αによるインスリン抵抗性の増大は、代償的にインスリン分泌を増やします。高インスリン血症は腎臓でのナトリウム再吸収を促進し、血圧を上昇させます。「内臓脂肪→高血圧」には、これだけの複雑な経路が絡み合っています。降圧薬だけで管理しようとしても限界があるのは、根本原因(内臓脂肪)が温存されているからです(コラム㉜参照)。
血糖への影響——インスリンが効かなくなる体
内臓脂肪による血糖悪化のメカニズムの中心は、インスリン抵抗性です。
TNF-αをはじめとする炎症性サイトカインは、インスリンシグナル伝達経路(IRS-1/PI3K経路)を直接妨害します。インスリンが分泌されても、細胞がその信号を受け取れなくなる——これがインスリン抵抗性の分子メカニズムです。
さらに内臓脂肪からの遊離脂肪酸が肝臓に大量に流れ込むと(門脈を介して直接肝臓に届くのが内臓脂肪の特徴)、肝臓でのインスリン抵抗性が高まり、肝糖産生(肝臓がブドウ糖を作り出すこと)が増加します。空腹時血糖が高くなる主要な原因の一つです。
アディポネクチンの低下も重なって、膵臓のβ細胞への負荷が増大し、長期的には膵臓のインスリン分泌能力そのものが低下していきます。これが「内臓脂肪→インスリン抵抗性→2型糖尿病」という一本道です。
脂質への影響——中性脂肪が上がりHDLが下がる「最悪の組み合わせ」
内臓脂肪による脂質異常は、以下のパターンで現れます。
中性脂肪(TG)の上昇:
内臓脂肪からの遊離脂肪酸が肝臓に流れ込むと、肝臓はこれを原料にVLDL(超低密度リポタンパク)を大量に合成します。VLDLは血中で分解されて中性脂肪として測定されるため、内臓脂肪が多いと中性脂肪が上昇します。HDLコレステロールの低下:
中性脂肪が高い状態では、HDL粒子に中性脂肪が取り込まれ、HDLが分解されやすくなります。また、アディポネクチンの低下もHDL合成を抑制します。「中性脂肪が高いとHDLが低い」という逆相関は、内臓脂肪を共通の原因とする現象です。small dense LDLの増加:
通常のLDLよりも小さく密度の高い「small dense LDL」が増加します。これは通常のLDL測定値に反映されにくいですが、動脈硬化を促進する能力が通常のLDLより高く、心血管リスクを大きく高めます。内臓脂肪による脂質異常は「中性脂肪高値+HDL低値+small dense LDL増加」という組み合わせで現れ、これは「動脈硬化促進型脂質異常症」と呼ばれます。LDLだけを見ていては見落とされる危険なパターンです(コラム⑫・⑳参照)。
内臓脂肪の正しい減らし方——当院での診療アプローチと院長自身の実践
内臓脂肪は「減りやすい」——これは本当
皮下脂肪と比較して、内臓脂肪は食事・運動療法への反応が良く、比較的短期間で減少しやすいことが知られています。これは内臓脂肪が代謝的に活発であり、エネルギー需要が生じたときに動員されやすいからです。
「お腹の脂肪はなかなか落ちない」と思っている方が多いですが、実は内臓脂肪は皮下脂肪より先に減ります。適切な食事管理と運動を組み合わせれば、3ヶ月で腹囲が3〜5cm減少するケースは珍しくありません。
食事——何を減らし、何を増やすか
内臓脂肪を減らす食事で最も重要なのは、糖質と脂質の過剰摂取を抑えることです。特に内臓脂肪蓄積に直結するのは、精製糖質(白米・パン・麺・砂糖)と果糖(清涼飲料水・果物ジュース)の過剰摂取です。果糖は肝臓で直接中性脂肪に変換されるため、内臓脂肪増加に特に影響します。
私自身は16時間断食(正午〜20時の食事ウィンドウ)を実践しています。断食中は肝臓のグリコーゲン(糖の貯蔵)が枯渇し、脂肪酸がエネルギー源として動員されます。この「脂肪燃焼モード」への切り替えが、内臓脂肪減少に有効だと実感しています。ただし、インスリンや血糖降下薬を使用している患者さんには低血糖のリスクがあるため、断食系のアプローチは必ず主治医と相談してから行ってください。
増やすべきは食物繊維(野菜・きのこ・海藻・豆類)とタンパク質です。食物繊維は糖・脂質の吸収を緩やかにし、腸内環境を整えます。タンパク質は筋肉量の維持に不可欠で、基礎代謝を守る観点からも重要です。
運動——内臓脂肪に最も効く種目
内臓脂肪減少に最も効果的な運動は、中等度以上の有酸素運動です。ウォーキング・ジョギング・自転車・水泳など、週150分以上を目標にします(コラム㊱参照)。
特に「息が少し上がる程度の速歩」は、内臓脂肪の燃焼に非常に効率的です。軽い散歩では不十分で、少し汗ばむ程度の強度が必要です。
筋力トレーニングを組み合わせることで、筋肉量が増え基礎代謝が上がります。安静時でも脂肪を燃やしやすい体質に変えることができます。スクワット・腕立て伏せ・腹筋を週2〜3回行うことを私は外来で強くすすめています。
GLP-1受容体作動薬・SGLT2阻害薬の内臓脂肪への効果
近年の糖尿病・肥満治療薬の進歩は目覚ましく、GLP-1受容体作動薬(セマグルチド・チルゼパチド:マンジャロなど)は、食欲抑制・体重減少・内臓脂肪減少に顕著な効果を示しています(コラム⑪・㉑参照)。
SGLT2阻害薬(エンパグリフロジン・ダパグリフロジンなど)も、糖を尿から排泄することでカロリーを消費し、内臓脂肪の減少に貢献します。
ただしこれらの薬は、あくまでも食事・運動療法の補助として位置づけられるものです。「薬を飲めば食事・運動しなくていい」ではなく、「食事・運動の効果を薬が後押しする」という考え方が正しいアプローチです。
南千住・荒川区の患者さんへ
「健診でメタボと言われたけれど、どこから手をつければいいかわからない」「血圧・血糖・中性脂肪が全部引っかかった」——こうした状況の患者さんこそ、循環器内科・生活習慣病専門の視点から根本原因(内臓脂肪)に向き合う診療が必要です。
茂澤メディカルクリニック南千住では、腹囲・体重・血液検査(アディポネクチン含む)を組み合わせて内臓脂肪のリスクを評価し、食事・運動・薬物療法を個別に組み合わせた包括的な管理を行っています。南千住・荒川区・北千住・墨田区エリアの患者さんのWeb予約は24時間受け付けています。
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★まとめ
・内臓脂肪は「貯蔵庫」ではなく「炎症物質の工場」です。アディポサイトカインという生理活性物質を産生し、血圧・血糖・脂質を同時に悪化させます・善玉アディポサイトカイン(アディポネクチン)は内臓脂肪が増えると低下します。アディポネクチンは血糖・血管・脂質を同時に守る「守護神」的な物質です
・悪玉アディポサイトカイン(TNF-α・IL-6・PAI-1)の過剰分泌が、インスリン抵抗性・慢性炎症・血栓形成リスクを高めます
・内臓脂肪は三方向(レニン系・交感神経・インスリン抵抗性)から血圧を上昇させ、中性脂肪高値+HDL低値というリスクの高い脂質パターンを作り出します
・内臓脂肪は皮下脂肪より減りやすいです。中等度有酸素運動・糖質制限・タンパク質・食物繊維の充実した食事が基本的な対策です
・腹囲(男性85cm・女性90cm以上)が基準ですが、腹囲が正常でも内臓脂肪過多のケースがあります。血液検査の数値と合わせた総合評価が重要です
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★よくあるご質問(FAQ)Q➤ 腹囲が基準以下なのに血圧・血糖が悪いのはなぜですか?
A➤ 腹囲が正常でも内臓脂肪が蓄積しているケース(隠れ肥満)があります。特に筋肉量が少ない方は体重・腹囲が正常でも体脂肪率が高く、内臓脂肪が蓄積していることがあります。腹囲だけでなく、アディポネクチン・中性脂肪・HDLコレステロールを含む血液検査での総合評価が重要です。Q➤ 内臓脂肪はどのくらいの期間で減りますか?
A➤ 食事・運動療法を適切に行えば、3ヶ月で腹囲2〜5cmの減少が期待できます。内臓脂肪は皮下脂肪より代謝が活発で減りやすいのが特徴です。ただし体重が変わらなくても内臓脂肪が減り筋肉量が増えることがあるため、体重だけで評価せず、腹囲・血液検査の数値変化で確認することをおすすめします。Q➤ アディポネクチンを増やす方法はありますか?
A➤ 最も確実なのは内臓脂肪を減らすことです。有酸素運動・中等度の糖質制限・魚に含まれるEPA・DHAの摂取がアディポネクチンを増加させることが示されています。また禁煙・節酒もアディポネクチン増加に有効です。一部の糖尿病薬(チアゾリジン系・GLP-1受容体作動薬)にもアディポネクチン増加作用があります。Q➤ 健診でメタボと診断されました。まず何から始めればいいですか?
A➤ 最初の一手は「腹囲を1ヶ月で1cm減らす」という小さな目標設定です。具体的には、毎日の食後20〜30分のウォーキング、清涼飲料水・果物ジュースの中止、白米・パンの量を1割減らすことから始めてください。この三つだけで、多くの患者さんで1〜2ヶ月以内に中性脂肪・血糖の改善が現れます。数値の変化を確認しながら続けることがモチベーション維持の鍵です。Q➤ マンジャロなどのGLP-1薬は内臓脂肪に効きますか?
A➤ 効果があります。GLP-1受容体作動薬(特にチルゼパチド:マンジャロ)は食欲抑制・体重減少を通じて内臓脂肪を顕著に減少させます。臨床試験では体重の15〜20%減少が報告されており、それに伴う血圧・血糖・脂質の改善も確認されています。ただし薬の適応・使用は主治医が判断するものです。食事・運動療法との組み合わせが前提となります(コラム⑪参照)。
参考文献
日本肥満学会「肥満症診療ガイドライン2022」
日本内科学会「メタボリックシンドローム診断基準2005」
Matsuzawa Y. "Adiponectin: a key player in obesity related disorders." Current Pharmaceutical Design, 2010.
Hotamisligil GS. "Inflammation and metabolic disorders." Nature, 2006.
Despres JP, Lemieux I. "Abdominal obesity and metabolic syndrome." Nature, 2006.
Grundy SM. "Metabolic syndrome pandemic." Arteriosclerosis, Thrombosis, and Vascular Biology, 2008.
日本糖尿病学会「糖尿病診療ガイドライン2024」
厚生労働省「令和元年国民健康・栄養調査報告」このコラムの執筆者
院長:茂澤 幸右
糖尿病学会所属・循環器内科専門医
循環器内科専門医として、糖尿病・高血圧・脂質異常症などの生活習慣病診療に従事。
血糖や血圧の管理だけでなく、将来の心筋梗塞や心不全を防ぐ視点を大切に、
日々の外来で患者さんと向き合っています。
このコラムでは、健診結果の見方や最新の医療情報などを、
外来で実際にお話ししている言葉で分かりやすく解説しています。
【経歴】
日本医科大学医学部 卒業
日本医科大学大学院医学研究科(循環器内科学)修了
【資格】
医学博士
循環器内科専門医
内科認定医
【所属学会】
日本内科学会
日本循環器学会
日本心臓病学会
日本糖尿病学会