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院長コラム

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    2026/01/13

    定期的に見直したい健診結果の読み方

    ― 院長が教える「数値の意味」と生活習慣病リスク ―

    健診結果の紙を、今日はぜひ手元に置いたまま読んでみてください。
    この文章は、外来で私が実際に患者さんと健診結果を一緒に見ながら話している内容を、詳しめに文章にしたものです。
    外来で本当によく聞くのが、
    「赤字じゃなかったので大丈夫だと思っていました」
    「去年と同じ数値だったので安心していました」
    という言葉です。
    ですが、循環器内科専門医として正直に言うと、
    健診結果は“異常か正常か”を見るものではありません。
    将来、心臓・血管・腎臓にどんな負担がかかり始めているかを読む重要な資料です。

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    健診結果表は「上から順」に意味があります

    多くの健診結果表は、次のような順番で並んでいます。

    1.血圧
    2.血糖
    3.脂質
    4.尿酸
    5.肝機能
    6.腎機能
    7.体重・腹囲(時系列)

    これは偶然ではありません。
    心血管リスクが表面化しやすい順番です。
    見開きの場合は左半分(表)が体重や血圧などのバイタル数値で右側半分(裏)が血液検査項目となっていたりすることもあります。

    血圧:まず「上」よりも“構成”を見てください

    血圧は多くの場合、
    「130 / 85 mmHg」
    のように書かれています。
    多くの方は「130ならまあ大丈夫」と思います。
    ですが私は、まず下の血圧(85)を見ます。

    ▷ なぜ拡張期血圧が重要なのか
    拡張期血圧が高いということは、
    血管の末梢抵抗が強くなっている=血管が硬くなり始めている
    可能性を示します。
    血管は心臓の延長です。
    血管が硬くなれば、その負荷は必ず心臓に返ってきます。
    実際、拡張期血圧が高めの状態が続いている方では、

    •左室(≒心臓のポンプ室の)肥大
    •左室拡張障害 (心臓のポンプ室が硬くて広がりづらくなる状態)
    •労作時の息切れ
    •心不全

    へと進行していくケースを、外来で何度も見てきました。
    「去年と同じ血圧だから安心」
    これは、循環器内科的には最も危険な安心感です。

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    血糖:HbA1cが正常でも“安全”とは限らない

    血糖の欄には、

    •空腹時血糖
    •HbA1c

    が並びます。
    HbA1cが5.5%前後だと、
    「大丈夫ですね」と言われることも多いと思います。
    ただ、外来ではこういう方が少なくありません。

    •正月明けに体重が増えている
    •食後に強い眠気が出る
    •夕食が遅く、間食が多い
    •家族に糖尿病の方がいる

    HbA1cはあくまで平均値です。
    言い換えれば、
    大きく上下していても平均すれば“正常”に見える数字です。
    血糖の乱高下(血糖変動)は、

    •血管内皮障害
    •動脈硬化の進行
    •冠動脈疾患リスク増加

    と強く関連することが分かっています。
    「HbA1cが正常=安心」ではありません。

    脂質:最優先で見るのはLDLコレステロール

    脂質の項目には、

    •LDLコレステロール
    •HDLコレステロール
    •中性脂肪

    が並びます。
    ここで循環器内科として最も重視するのはLDLコレステロールです。

    ▷ LDLは“これまでの生活の結果”
    LDLは、
    前日の食事では大きく動きません。
    長年の生活習慣の積み重ねが反映される数字です。
    120 mg/dL前後。
    この数値を「まあ許容範囲」と考えるかどうかで、
    5年後・10年後の心筋梗塞リスクは変わります。
    一方、中性脂肪は、

    •食事
    •飲酒
    •検査前の空腹時間

    に強く影響されるため、
    単回の健診結果で一喜一憂する項目ではありません。

    尿酸値:「痛風の数字」では終わらせない

    尿酸値が7.0 mg/dLを超えていると、
    「痛風が心配ですね」と言われることが多いと思います。
    ですが循環器内科的には、
    尿酸は血管と腎臓への負荷の指標です。
    高尿酸血症は、

    •高血圧
    •慢性腎臓病
    •心血管イベント

    と密接に関連します。
    「発作がないから放置」でよい数字ではありません。

    肝機能(AST・ALT・γ-GTP):生活習慣病の裏口

    肝酵素がじわじわ上がっている場合、
    「お酒ですかね」で済まされることもあります。
    しかし実際には、
    脂肪肝(MAFLD)が背景にあるケースが非常に多い。
    脂肪肝は、

    •糖尿病
    •脂質異常症
    •高血圧

    と同じ線上にあり、
    心血管リスクの一部として評価すべき状態です。

    腎機能:eGFRは“血管の総合点”

    腎機能の欄には、

    •クレアチニン
    •eGFR

    が書かれています。
    健診結果でeGFRを見て、
    「何の数字か分からない」「年齢のせいと言われた」
    という方はとても多いです。
    eGFRは、簡単に言うと
    腎臓が血液をどれくらいきれいにできているかを表す数字です。
    数字が大きいほど腎臓の働きが良く、
    小さくなるほど腎臓の力が落ちていると考えます。

    eGFRはどうやって出している?

    eGFRは、次の情報を使って計算されています。

    クレアチニン(血液中の老廃物)
    •年齢
    •性別

    クレアチニンは、
    腎臓でろ過されて体の外に捨てられる老廃物です。
    腎臓の働きが落ちると、血液中にたまりやすくなります。
    ただし、クレアチニンは筋肉量の影響も受けるため、
    高齢の方や痩せている方では正常でも安心できないことがあります。
    そのため、年齢などを加味して計算したのがeGFRです。

    eGFRが60を切り始めた段階で、
    「年齢のせい」と言われることもあります。
    しかし腎臓は血管の塊です。
    腎機能の低下は、
    全身の血管障害が始まっているサインでもあります。
    循環器内科では、
    eGFR低下=心血管リスク上昇と考えます。

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    体重・腹囲:一番見逃されやすく、一番重要

    健診結果に過去数年分の体重が載っている場合、
    必ず見てほしいのは「変化率」です。

    5%以上の体重増加
    → 糖尿病・高血圧リスク上昇
    10%以上の体重増加
    → 心血管イベントリスクが明確に上昇

    「毎年1kgずつ増えている」
    これが一番危ないパターンです。

    当院の考え方

    茂澤メディカルクリニック南千住では、
    健診結果を

    •血圧
    •血糖
    •脂質
    •尿酸
    •肝機能
    •腎機能
    •体重推移

    まで含めて一体として評価し、
    将来の心臓・血管リスクを見据えて説明します。
    健診結果をお持ちいただければ、
    「どこが問題で、どこが今は大丈夫か」を
    循環器内科専門医の立場で整理します。

    ここまで詳しく書いてきましたが、やはり専門性も高くむずかしいと及び腰になっている方もいると思います。
    是非お気軽に健診表をお持ちになり当院に相談へいらしていただければと思います。

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    参考文献

    1.日本高血圧学会 高血圧治療ガイドライン2023
    2.日本糖尿病学会 糖尿病診療ガイドライン2024
    3.日本動脈硬化学会 動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022
    4.KDIGO Clinical Practice Guideline for Chronic Kidney Disease, 2012
    5.Prospective Studies Collaboration. Lancet. 2009
    6.Redfield MM, et al. NEJM. 2003(拡張障害と心不全)

    このコラムの執筆者

    院長画像

    院長:茂澤 幸右
    糖尿病学会所属・循環器内科専門医


    循環器内科専門医として、糖尿病・高血圧・脂質異常症などの生活習慣病診療に従事。
    血糖や血圧の管理だけでなく、将来の心筋梗塞や心不全を防ぐ視点を大切に、
    日々の外来で患者さんと向き合っています。
    このコラムでは、健診結果の見方や最新の医療情報などを、
    外来で実際にお話ししている言葉で分かりやすく解説しています。

    【経歴】
    日本医科大学医学部 卒業
    日本医科大学大学院医学研究科(循環器内科学)修了

    【資格】
     医学博士
    循環器内科専門医
    内科認定医

    【所属学会】
    日本内科学会
    日本循環器学会
    日本心臓病学会
    日本糖尿病学会
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