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院長コラム

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    2026/04/09

    血圧が高いと健診で指摘された!どの診療科にかかればいいの? 〜循環器内科専門医の院長が、受診先の選び方から注意点まで徹底解説〜

    健診の結果票を見て、こう思いませんでしたか。
    「内科? 循環器内科? どこに行けばいいんだろう」
    「近くのクリニックでいいの? 大きい病院のほうが安心?」
    「…症状もないし、1回高かっただけだし、様子見でもいいかな」
    正直に言います。
    この「様子見でいいか」が、一番怖い。
    外来をやっていると、そういう経緯で来られる方がいます。
    「1年前の健診でも高いと言われていたんですけど、忙しくて」
    そういって来院される。
    そしてその時点で、すでに心臓が肥大していたり、腎機能が落ちていたりする。
    後悔させたくないから、今日このコラムを書いています。

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    どこに行けばいいか——答えを先に言います

    「内科」か「循環器内科」です。
    「循環器内科って心臓が悪い人が行くところじゃないの?」
    そう思っている方、多いです。
    でも違います。
    高血圧は、循環器内科のど真ん中の専門領域です。
    心臓だけじゃない。脳、腎臓、目——全身の血管に圧力がかかり続ける病気だから、血管を専門にしている科が診るべき問題なんです。
    ただ、「内科」と「循環器内科」のどちらがいいかは、状況によって変わります。
    まず「内科(かかりつけ医)」でいい場合
    健診で初めて指摘された。数値が140〜159/90〜99mmHg程度。
    糖尿病や脂質異常症も一緒に診てほしい。
    まずは自分の状態を知りたい、という段階。
    この場合、かかりつけの内科から始めるのが自然です。
    「循環器内科専門医」に来てほしい場合
    2種類以上の降圧薬を飲んでいるのに血圧が下がらない。
    160/100mmHg以上が続いている。
    動悸・息切れ・胸の圧迫感を伴っている。
    若くして家族が心筋梗塞・脳卒中を起こした。
    心電図で左室肥大・不整脈を指摘された。
    こういう方は、最初から循環器専門医に来たほうがいい。
    当院は私が内科と循環器内科専門医を兼ねているので、どちらの入口で来てくれても診られます。
    「どっちとして来ればいいかわからなかった」——それで全く構いません。

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    大病院とクリニック、正直な話をします

    「大きい病院のほうが安心なんじゃないか」
    わかります。その感覚は理解できる。
    私も大学病院に勤務していたことがあるので、両方の現実を知っています。
    だから正直に言います。
    高血圧の初期管理において、大病院がクリニックより優れていることは、多くの場合ありません。
    大病院には確かに最新の機器がある。専門チームもいる。
    でも現実問題として、初診まで数週間待つことがある。毎回担当医が変わることがある。一人の診察が短くて、生活習慣の話まで辿り着かないことがある。
    それで困るんです。高血圧は。
    なぜかというと、高血圧というのは一回診て終わりにできない病気だからです。
    体重、季節、年齢、他の病気との兼ね合い——これらが変わるたびに、治療の方針も微調整が必要になる。
    長く、継続して診てもらえる環境が、何より大事なんです。
    日本高血圧学会(JSH 2023)のガイドラインも、基本は「かかりつけ医を中心とした継続管理」であり、必要に応じて専門医・基幹病院と連携する体制を推奨しています。
    だから現実的な答えはこうです。
    まず信頼できるかかりつけのいるクリニックで診てもらう。
    必要と判断されたら、そこから大病院に紹介してもらう。
    このルートが、多くの方にとって最もスムーズで、かつ長続きする管理につながります。
    当院でも、日本医科大学附属病院・東京リバーサイド病院と連携しているので、精密検査や入院が必要と判断したときは責任を持って紹介します。

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    「1回だけ高かっただけ」の方へ——これが一番伝えたいことです

    「あの日は緊張していたから」
    「白衣を見ると血圧が上がるって聞いたことがあって」
    「家で測ったら普通だったから、もう大丈夫かと」
    毎日のように聞く言葉です。
    そして正直なことを言うと、そう言いながら1年、2年と過ごしてきた方が、ある日突然来院されることがあります。
    「先生、最近少し息苦しくて」と。
    心臓の超音波を当てると、すでに壁が厚くなっている。心臓が肥大している。
    それは高血圧が何年もかけて、静かにやってきた結果です。
    否定はしません。血圧は変動します。
    緊張、睡眠不足、気温、カフェイン——いろんな要因で上下する。
    だから「1回の測定だけで高血圧と断言することはできない」、これは医学的に正しい。
    日本高血圧学会のガイドライン(JSH 2023)では、異なる日に複数回測った診察室血圧が140/90mmHg以上、あるいは家庭血圧が135/85mmHg以上を高血圧と定義しています。1回高かっただけで薬が始まることはありません。それは安心していただいて大丈夫です。
    ただ。
    「1回高かった」ということは、少なくともその瞬間、あなたの血管はそれだけの圧力を受けていた、ということです。
    車のエンジンに、規定値を超えた油圧がかかったとします。
    その日は壊れなかった。でも「まあ1回だけだし」と放置する人はいないと思う。
    普通は点検します。
    血管も同じです。
    高い圧力が続くと、まず血管の内壁で「一酸化窒素(NO)」の産生が落ちてきます。
    NOは血管を柔らかく保つ物質です。これが減ると血管は硬くなり、広がりにくくなる。
    そこに酸化ストレスが加わり、炎症が起き、悪玉コレステロール(LDL)が血管壁に侵入しやすくなる。
    マクロファージが集まり、泡沫化して、プラーク——血管内のコブ——が積み上がっていく。
    そのプラークが破裂したとき、血栓ができて、心筋梗塞・脳梗塞へとつながります。
    これが「サイレントキラー」と呼ばれる理由です。
    その間、本人には何の症状もない。
    痛くもない、苦しくもない。ただ静かに、血管が傷んでいく。
    Lancet誌のメタ解析(Ettehad D, et al. 2016)では、収縮期血圧が10mmHg上がるごとに主要心血管イベントのリスクが約20%上昇することが示されています。
    10mmHgというのは、「少し高め」のレベルです。「大したことない」と思っていたその数字が、実はそれだけの意味を持っている。
    薬を飲むかどうかより先に、今の自分の血管がどんな状態にあるかを知ること。
    それが最初にやることです。

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    初診で何をするか——来る前に知っておいてほしいこと

    「行くのはわかった。でも何をされるんだろう」
    初めての受診は誰でも少し不安なものです。当院での流れをお伝えします。
    ① まず家庭血圧の話を聞きます
    診察室で測る血圧は、そのときのスナップショットに過ぎません。
    もっと重要なのは日常生活での血圧、特に「早朝血圧」です。
    起床後、交感神経とRAA系(血圧を調節するホルモン系)の活性が一日で最も高くなるこの時間帯は、心筋梗塞・脳卒中が最も発症しやすい時間帯とも重なっています。
    記録があればご持参ください。まだ測っていない方には、正しい測り方からお伝えします。
    血圧計は腕のマンシェットタイプを、5,000〜10,000円程度で買えます。将来の自分への投資として、ぜひ一台置いてほしい。
    ② 血液・尿検査で全体像を見ます
    高血圧は単独で来ることが少ない。
    血糖・コレステロール・腎機能・尿酸値——これらをまとめて評価して初めて、本当のリスクが見えてきます。
    また、血圧が高い原因として「別の病気」が隠れていることがあります。副腎の腫瘍、腎動脈の狭窄——いわゆる二次性高血圧です。これは血液検査が最初の手がかりになります。
    ③ 心電図で心臓を確認します
    高血圧が長く続くと、心臓が過重労働の末に肥大してくることがあります。
    心電図で不整脈や虚血性変化を確認し、必要であれば心臓超音波で心臓の形と動きを評価します。
    「まだそこまで必要ない」と感じる方もいるかもしれないけれど、この確認をしておくことで、後で「あのとき見ておいてよかった」となることが少なくない。
    ④ 家族歴・生活習慣を聞きます
    「親がコレステロールの薬を飲んでいた」「祖父が脳梗塞を起こした」——こういう情報は、数値と同じくらい重要です。
    遺伝的な背景は、将来リスクを読む上で欠かせない情報です。遠慮なく教えてください。
    初診でいきなり「では薬を出します」とはなりません。
    まず全体像を把握して、一緒に方針を考える。それが私の外来のやり方です。

    ■ 当院が大切にしていること
    高血圧を抱えている患者さんを長年診てきて、一つ強く感じることがあります。
    血圧だけが高い人は、本当に少ない。
    ほとんどの場合、糖尿病、脂質異常症、肥満、睡眠時無呼吸症候群——これらが複雑に絡み合っている。それぞれが互いを悪化させながら、心臓と血管を静かに傷めていく。
    だから「血圧だけ下げればいい」という発想では、本当の意味での管理にならない。
    当院では私が循環器内科専門医として心臓と血圧を診ながら、糖尿病・脂質・体重管理まで一元的に診ることができます。
    内科・皮膚科・整形外科・リハビリが同じ建物にあるので、家族みんなのかかりつけとして使ってもらえる体制でもあります。
    「どこに行けばいいかわからない」という状態で来てくれた方が、「ここに来てよかった」と言ってくれる。
    それが、私が外来を続けている理由の一つです。
    健診結果を持ってきてください。
    その数字が今あなたの体の中で何を意味しているか、丁寧にお話しします。
    迷っているなら、来てください。それだけです。

    ■ まとめ
    健診で血圧が高いと言われたら、まず「内科」または「循環器内科」へ。
    症状がなくても、高血圧は静かに血管を傷め続けます。
    大病院かクリニックか迷ったら、継続して診てもらえるかかりつけのいるクリニックを選ぶのが基本。
    「1回だけ高かった」という方こそ、早めに専門家と現状を確かめてください。
    南千住で生活習慣病のかかりつけ医をお探しの方は、どうぞお気軽にご相談ください。

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    参考文献

    日本高血圧学会 高血圧治療ガイドライン2023(JSH 2023)
    Ettehad D, et al. "Blood pressure lowering for prevention of cardiovascular disease and death: a systematic review and meta-analysis." Lancet. 2016.
    Forouzanfar MH, et al. "Global burden of hypertension and systolic blood pressure of at least 110 to 115 mm Hg." JAMA. 2017.
    厚生労働省 令和4年 患者調査・生活習慣病に関する統計資料

    このコラムの執筆者

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    院長:茂澤 幸右
    糖尿病学会所属・循環器内科専門医


    循環器内科専門医として、糖尿病・高血圧・脂質異常症などの生活習慣病診療に従事。
    血糖や血圧の管理だけでなく、将来の心筋梗塞や心不全を防ぐ視点を大切に、
    日々の外来で患者さんと向き合っています。
    このコラムでは、健診結果の見方や最新の医療情報などを、
    外来で実際にお話ししている言葉で分かりやすく解説しています。

    【経歴】
    日本医科大学医学部 卒業
    日本医科大学大学院医学研究科(循環器内科学)修了

    【資格】
    医学博士
    循環器内科専門医
    内科認定医

    【所属学会】
    日本内科学会
    日本循環器学会
    日本心臓病学会
    日本糖尿病学会
SUBJECTS

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