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院長の生活習慣病コラム

  • 院長の生活習慣病コラム
    2026/09/10

    マンジャロ・ゼップバウンドとは何か——効果・処方条件・副作用・リバウンドの真実を循環器専門医が整理する

    はじめに——「マンジャロを打てば痩せる」は、半分しか正しくない

    「先生、マンジャロって打てば痩せるんですよね?」

    外来でこう聞かれることが、最近急激に増えました。テレビ・SNS・ウェブ記事でマンジャロ(チルゼパチド)の話題が飛び交い、「夢の痩せ薬」として認知されつつあるようです。

    答えは「半分正しくて、半分間違い」です。

    マンジャロが強力な体重減少効果を持つことは事実であり、そのエビデンスは現存する肥満治療薬の中で最も強力なものの一つです。しかし「打てば自動的に痩せ続ける」という認識は、大きな誤解を招きます。

    私がこの薬に対して持っているスタンスを、最初に率直に述べておきます。マンジャロは、正しく使えば糖尿病・肥満という深刻な疾患を持つ患者さんの人生を変え得る、非常に優れた薬です。しかしそれは、食事・運動という生活習慣の変革と組み合わさったときに初めて、持続的な効果を発揮します。薬だけに頼る使い方は、薬をやめた瞬間に元に戻る「高価なリース契約」に過ぎません。

    今回は、マンジャロ・ゼップバウンドの作用機序・効果・処方条件・副作用・リバウンドの問題まで、循環器内科・生活習慣病専門医として持てる知識を全て出して解説します。

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    マンジャロ・ゼップバウンドとは何か——作用機序と従来薬との決定的な違い GLP-1受容体作動薬の登場——オゼンピック・ビクトーザの時代

    マンジャロを理解するには、まずその「先輩格」であるGLP-1受容体作動薬から話を始める必要があります。

    GLP-1(グルカゴン様ペプチド-1)は、食事をとると小腸から分泌されるホルモンです。GLP-1には以下の作用があります。

    ・膵臓のβ細胞を刺激してインスリン分泌を促進する(血糖依存性)
    ・グルカゴン(血糖を上げるホルモン)の分泌を抑制する
    ・胃の排出を遅らせ、食後の満腹感を持続させる
    ・脳の視床下部に作用して食欲を抑制する

    GLP-1受容体作動薬(セマグルチド:オゼンピック・リベルサス、リラグルチド:ビクトーザなど)は、このGLP-1の作用を薬として再現・増強したものです。糖尿病治療薬として開発されましたが、強力な食欲抑制・体重減少効果から肥満治療薬としても注目されるようになりました。

    セマグルチドの肥満治療試験(STEP試験)では、週1回皮下注射で平均14.9%の体重減少が確認されており、これは従来の肥満治療薬を大きく上回る数字でした。

    マンジャロ(チルゼパチド)——GLP-1に加えてGIPも作動する「デュアル作動薬」

    マンジャロの最大の特徴は、GLP-1受容体だけでなく、GIP(グルコース依存性インスリン分泌刺激ポリペプチド)受容体にも同時に作用する「デュアル(二重)受容体作動薬」であるという点です。

    GIPはGLP-1と同様に食後に分泌されるインクレチンホルモンですが、その作用はGLP-1とは一部異なります。

    GIPの主な作用:
    ・インスリン分泌を促進する(GLP-1と相乗的)
    ・脂肪組織でのエネルギー代謝を調節する
    ・脂肪細胞への脂肪蓄積を調節する(特定条件下で脂肪分解促進)
    ・骨代謝に関わる
    ・脳への作用(食欲抑制・報酬系への影響)

    GLP-1とGIPの両方の受容体に作用することで、インスリン分泌促進・食欲抑制・脂肪代謝改善が相乗的に強化されます。これが、マンジャロが従来のGLP-1単独作動薬を上回る体重減少効果を示す根本的な理由です。

    SURMOUNT試験——マンジャロの体重減少効果を数字で見る

    マンジャロの肥満治療効果を示した最大規模の試験が、SURMOUNT-1試験(2022年、New England Journal of Medicine掲載)です。

    対象:BMI30以上(または27以上+合併症あり)で糖尿病のない肥満成人2,539人
    期間:72週間
    ー結果ー

    用量        平均体重減少率
    チルゼパチド5mg/週 -15.0%
    チルゼパチド10mg/週 -19.5%
    チルゼパチド15mg/週 -20.9%
    プラセボ     -3.1%

    15mg用量では、平均体重減少が20.9%。100kgの人が72週間で約21kg減少するという計算になります。これは肥満手術(バリアトリック手術)に匹敵するレベルの体重減少であり、薬物療法としては史上最強クラスのデータです。

    さらに、体重の5%以上減少した割合は85〜91%、10%以上減少した割合は69〜83%に達しました。

    糖尿病患者を対象としたSURMOUNT-3・4試験でも、同様に強力な体重減少と血糖改善効果が確認されています。

    ゼップバウンド(Zepbound)とは——マンジャロと何が違うのか

    「ゼップバウンド」という名前を耳にする機会が増えてきましたが、マンジャロとゼップバウンドは同じ成分(チルゼパチド)です。

    マンジャロ(Mounjaro): 2型糖尿病治療薬として承認・販売
    ゼップバウンド(Zepbound): 肥満治療薬として米国FDAが2023年11月に承認・販売

    日本では2023年にマンジャロが2型糖尿病治療薬として承認され、2024年には肥満症治療薬としての適応も追加されました。「ゼップバウンド」という製品名は現時点では日本未発売ですが、海外では肥満治療薬として広く認知されており、個人輸入などで流通しているケースがあります(この問題については㊶で詳述します)。

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    誰が処方を受けられるのか——保険適用条件と処方できる施設の現実 日本での保険適用条件——「誰でももらえる薬」ではない

    マンジャロに対する最大の誤解の一つが、「肥満外来に行けば誰でも処方してもらえる」というものです。これは事実ではありません。

    2024年時点で日本における肥満症治療薬としてのマンジャロの保険適用条件は以下の通りです。

    ①BMI基準:

    BMI35kg/m²以上
    またはBMI27kg/m²以上で、高血圧・糖尿病・脂質異常症・睡眠時無呼吸症候群などの肥満関連合併症が2つ以上ある場合

    ②生活習慣の改善努力が前提:

    食事療法・運動療法を3ヶ月以上実施しても十分な効果が得られなかった場合

    ③処方できる施設の条件(2024年時点):

    肥満症治療の専門的な知識・体制を持つ医療機関
    管理栄養士・看護師等によるチーム医療体制が整備されていること
    日本肥満学会が認定する肥満症専門病院・肥満症連携病院が主要な処方施設

    つまり、「少しお腹が気になる」「5kg痩せたい」というレベルでは、保険適用での処方は受けられません。

    糖尿病治療薬としての処方条件

    マンジャロが2型糖尿病治療薬として処方される場合は、肥満症としての条件は必要ありません。2型糖尿病の診断があり、主治医が適応ありと判断した場合に処方可能です。

    ただしこの場合も、「体重を落とすために糖尿病治療薬として処方してもらう」という目的外使用は、医師の倫理的・法的な問題になり得ます。適切な診断と目的に基づく処方が原則です。

    自由診療でのマンジャロ処方——「気軽に処方」の問題点

    保険適用の条件を満たさない場合でも、自由診療(保険外診療)でマンジャロを処方するクリニックが増えています。費用は月額3〜5万円程度が一般的です。

    自由診療での処方自体が違法ではありませんが、以下の問題点があります。

    ・十分な問診・検査なしに処方されるケースがある
    ・副作用発生時のモニタリング体制が不十分なクリニックがある
    ・「痩せたい」という目的だけで、医学的な適応評価なしに処方されることがある
    ・費用が高額なため、途中中断→リバウンドというパターンが起きやすい

    私が考える理想的な処方体制は、処方前に血液検査(血糖・HbA1c・腎機能・肝機能・甲状腺機能・膵酵素)を行い、禁忌がないことを確認した上で、少量から開始し、副作用モニタリングと生活習慣指導を並行して行う——というものです。「打つだけ」の処方は、医療とは呼べません。

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    マンジャロの副作用——「大丈夫」と「要注意」を正確に知る 最も多い副作用——消化器症状

    マンジャロの副作用で最も頻度が高いのは、消化器系の症状です。SURMOUNT-1試験での報告頻度は以下の通りです。

    副作用      チルゼパチド(全用量平均) プラセボ
    悪心(吐き気)    約30〜40%          約6%
    下痢        約20〜30%          約10%
    嘔吐        約10〜20%          約2%
    便秘        約10〜20%          約3%
    腹痛        約10%           約4%
    胃食道逆流症    約5〜10%        約2%

    これらの消化器症状は、胃の排出が遅くなること(胃排出遅延)による副作用で、特に投与開始後・用量増量後に多く出現します。多くの場合は一過性で、数週間以内に軽減します。

    対策として重要なのは「用量の漸増(ゆっくり増やす)」です。マンジャロは2.5mgから開始し、4週ごとに5mg・7.5mg・10mg・12.5mg・15mgと段階的に増量するプロトコルが標準です。急に高用量から始めると消化器症状が強く出るため、「副作用が出ない最低限の用量で効果を出す」という考え方が重要です。

    外来でマンジャロを使用している患者さんから最も多く聞くのは「最初の1〜2ヶ月は吐き気がつらかった」という声です。しかし「増量を急がず、消化器症状が落ち着いてから次の用量へ」という方針で進めると、多くの方が継続できています。

    注意が必要な副作用①——急性膵炎

    GLP-1受容体作動薬全般で懸念される副作用の一つが、急性膵炎です。

    マンジャロの臨床試験での膵炎発症率は低く(約0.2〜0.3%)、プラセボ群との有意差はない試験もありますが、市販後調査では注意が必要とされています。

    急性膵炎の症状:
    ・突然の激しい上腹部痛(背中への放散痛を伴うことが多い)
    ・吐き気・嘔吐
    ・発熱

    これらの症状が出た場合は、すぐに医療機関を受診してください。マンジャロを服用中に激しい腹痛が出現した場合は、単なる消化器症状ではなく膵炎の可能性を疑う必要があります。

    処方前に膵炎の既往がある場合・膵臓に問題がある場合はマンジャロの使用を避けるべきです。また処方前の血液検査でアミラーゼ・リパーゼ(膵酵素)の値を確認しておくことも重要です。

    注意が必要な副作用②——甲状腺C細胞腫瘍(動物実験での懸念)

    マンジャロ(チルゼパチド)の添付文書には、甲状腺C細胞腫瘍に関する警告が記載されています。

    これはラット・マウスを用いた動物実験で、GLP-1受容体作動薬が甲状腺C細胞の増殖・腫瘍形成を引き起こすことが確認されたためです。ただし、この現象はげっ歯類に特有のメカニズムによるものであり、ヒトへの外挿性(同じことが人間に起きるか)は現時点では確認されていません。大規模な疫学研究でも、ヒトでの甲状腺C細胞腫瘍(髄様癌)リスクの増加は示されていません。

    ただし以下の場合はマンジャロは禁忌(使用禁止)です。

    ・本人または家族に甲状腺髄様癌の既往・家族歴がある
    ・MEN2(多発性内分泌腺腫症2型)と診断されている

    処方前に甲状腺の既往歴・家族歴を確認することが必須です。

    注意が必要な副作用③——低血糖

    マンジャロ単独では、インスリン分泌が血糖依存性(血糖が高いときだけインスリン分泌を促進)であるため、単独使用での低血糖リスクは低いです。

    しかし、インスリンやSU薬(スルホニルウレア薬)と併用した場合は低血糖リスクが増大します。マンジャロと他の糖尿病薬を組み合わせて使用している患者さんは、運動前後・食事量が少ない日の血糖確認が重要です。

    注意が必要な副作用④——胃麻痺(gastroparesis)と術前の注意

    マンジャロの胃排出遅延作用は、術前・処置前の絶食管理に影響する可能性があります。

    全身麻酔や内視鏡検査前に十分な絶食が行われていても、マンジャロ服用中は胃内容物が残存するリスクがあり、誤嚥(胃内容物が気道に入ること)の危険性が指摘されています。

    米国麻酔科学会(ASA)は、週1回投与のGLP-1受容体作動薬については、待機的手術前に1週間の休薬を推奨しています。マンジャロを服用中に手術・内視鏡検査が予定されている場合は、必ず担当医・麻酔科医に使用を申告してください。

    その他の副作用——脱毛・胆石・心拍数増加

    脱毛: 急激な体重減少に伴う「休止期脱毛」が報告されています。栄養不足・急激なカロリー制限と組み合わさった場合に起きやすく、多くは一過性です。十分なタンパク質摂取が予防に重要です。

    胆石・胆嚢疾患: 急激な体重減少により胆石が形成されやすくなります。SURMOUNT-1試験でも胆嚢炎・胆石症の発症率がプラセボ群より高い傾向がありました(約1〜2%)。右上腹部痛・食後の不快感が続く場合は胆嚢の評価が必要です。

    心拍数増加: マンジャロ服用中に安静時心拍数が2〜4拍/分程度増加することが報告されています。心疾患のある方・頻脈傾向のある方は処方前に心電図確認が望ましいです。

    注射部位反応: 発赤・かゆみ・硬結が注射部位に生じることがあります。毎回注射部位を変えること(ローテーション)で軽減できます。

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    リバウンドの真実と、院長が考える「正しいマンジャロの使い方」 マンジャロをやめたら何が起きるのか——SURMOUNT-4試験が示した衝撃のデータ

    マンジャロ(チルゼパチド)の中止後に何が起きるかを検証したSURMOUNT-4試験(2024年、JAMA掲載)は、非常に重要な示唆を与えてくれます。

    試験デザイン:
    まず36週間、全員にチルゼパチド15mgを投与(平均体重減少:-20.9%)
    その後、継続群とプラセボ切り替え群に無作為割付
    さらに52週間追跡

    結果:
    継続群: さらに-6.7%の体重減少(合計-25.8%)
    プラセボ切り替え群(中止群): +14.8%の体重増加(合計の約半分を取り戻す)

    つまりマンジャロをやめた群は、約1年で失った体重の約70%を取り戻しました。この結果は「薬をやめれば元に戻る」という現実を、数字で明確に示しています。

    なぜリバウンドするのか——肥満のメカニズムから考える

    リバウンドが起きる理由は単純です。マンジャロが食欲を抑制しているのは、薬の作用によってGLP-1・GIPシグナルが人工的に強化されているからです。薬をやめれば、この人工的なシグナルが消え、食欲は元のレベルに戻ります。

    さらに、体重が減少すると「レプチン(満腹ホルモン)」の分泌が低下し、「グレリン(空腹ホルモン)」が増加するという生理的な変化が起きます。体が「体重を元に戻そう」とする防衛反応です。これは進化的に刻み込まれたメカニズムであり、意志の力だけでは抗えません。

    院長の結論——「リバウンドするかどうか」は、薬を使っている間に何をしたかで決まる

    ここからは、私の個人的なスタンスを率直にお伝えします。

    「マンジャロをやめたらリバウンドする」という話を聞いて、「じゃあ意味がない」と思う方がいます。しかし私はその考え方に、根本的な誤りがあると思っています。

    そもそも、食事も運動も変えずにマンジャロだけ使って、やめた後にリバウンドするのは当然です。 リバウンドするかどうかは、薬を使っている間に何をしたかで決まります。

    マンジャロが提供する「食欲が抑えられている期間」は、人生の中でおそらく最も食事習慣を変えやすいウィンドウです。食欲がコントロールされているこの期間に、以下のことができれば話は変わります。

    ・白米・パン・麺類の量を習慣的に減らすことに慣れる
    ・野菜・タンパク質を優先する食事パターンを体に覚えさせる
    ・週150分の有酸素運動+週2〜3回の筋力トレーニングを習慣化する(コラム㊱参照)
    ・内臓脂肪を減らし、アディポネクチン分泌を改善させる(コラム㊲参照)
    ・体重が落ちた状態での「動きやすさ」「体の軽さ」を実感し、運動習慣の継続動機にする

    これを私は「習慣移植期間」と呼んでいます。マンジャロは食欲という最大の障壁を薬の力で一時的に取り除いてくれます。その間に、薬なしでも機能する習慣を「体と脳に植え付ける」——これが正しいマンジャロの使い方だと考えています。

    エビデンスが示す「生活習慣改善との組み合わせ」の重要性

    この考え方は、単なる私の持論ではありません。エビデンスが裏付けています。

    SURMOUNT-3試験(2023年、Nature Medicine掲載)では、チルゼパチド投与前に12週間の集中的な生活習慣介入(食事・運動指導)を行った群と、薬のみの群を比較しました。

    結果:生活習慣介入を先行した群では、チルゼパチド投与後の体重減少がさらに大きく(-26.6% vs -22.5%)、体組成(筋肉量の維持)も良好でした。

    また、GLP-1受容体作動薬と生活習慣介入を組み合わせた研究のメタ解析では、薬単独と比較して、組み合わせ群の方が体重維持効果が有意に高いことが示されています(Wilding JPH, et al. Diabetes, Obesity and Metabolism, 2023)。

    薬だけに頼るのではなく、薬を「習慣移植のきっかけ」として使う——このアプローチが、リバウンドを防ぎ、長期的な健康改善につながる唯一の現実的な戦略です。

    筋肉量の低下——マンジャロ使用中に最も見落とされがちなリスク

    マンジャロによる体重減少の内訳を見ると、脂肪だけでなく筋肉量も減少するという問題があります。SURMOUNT-1試験の体組成分析では、体重減少の約30〜40%が除脂肪体重(筋肉・骨など)の減少であることが示されています。

    筋肉量が落ちると基礎代謝が低下し、薬をやめたときにリバウンドしやすい体質になります。また、高齢者ではサルコペニア(筋肉量の病的減少)のリスクが高まります。

    この問題を防ぐために最も重要なのが、十分なタンパク質摂取(体重1kgあたり1.2〜1.5g/日)と筋力トレーニングの継続です。マンジャロを使いながら、スクワット・腕立て伏せ・ダンベルなどの筋力トレーニングを週2〜3回行うことで、筋肉量を維持しながら脂肪を落とすことが可能になります。

    「マンジャロで痩せた」と喜んでいても、筋肉が落ちて基礎代謝が下がっていたら、長期的には逆効果です。体重の数字だけでなく、体組成(脂肪と筋肉の比率)を意識した管理が必要です。

    当院でのマンジャロに対するスタンス

    当院は肥満症専門外来ではありませんが、糖尿病・生活習慣病の管理の中でマンジャロが適応になる患者さんへの処方・管理を行っています。

    処方に際して私が必ず行うことは以下の通りです。

    ・処方前の包括的な血液検査(血糖・HbA1c・腎機能・肝機能・甲状腺機能・膵酵素・脂質)
    ・禁忌事項の確認(甲状腺髄様癌の家族歴・膵炎の既往など)
    ・「薬をやめても維持できる生活習慣を作ることが目標」という方針の共有
    ・投与開始後4〜8週での副作用確認・血液検査
    ・体重だけでなく体組成・血液検査データの定期的なフォロー
    ・筋力トレーニングを含む運動習慣の具体的な指導(コラム㊱参照)

    南千住・荒川区でマンジャロに関心がある方・糖尿病・肥満の管理にお悩みの方は、まずご相談ください。Web予約はmozawa-medical.comから24時間受け付けています。

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    院長の結論

    マンジャロは現存する肥満・糖尿病治療薬の中で最も強力なエビデンスを持つ薬の一つです。しかし「打てば痩せ続ける魔法の薬」ではありません。

    私が外来で繰り返し伝えていることがあります。「リバウンドするかどうかは、薬を使っている間に何をしたかで決まる」——これが全てです。食欲が抑えられているこの貴重な期間を、食事・運動習慣の「移植期間」として使い切ることができれば、薬を減量・中止した後も体重を維持できる可能性が大きく高まります。

    副作用についても正確に知ってほしいのです。消化器症状は多いですが多くは一過性。膵炎・甲状腺リスクは稀ですが事前の確認が必須。筋肉量の低下は見落とされがちですが、タンパク質摂取と筋トレで対応できます。「怖い薬だから使わない」でも「夢の薬だから何も考えずに使う」でもなく、正確な知識を持って、医師の管理下で使う——それが唯一正しいアプローチです。

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    ★まとめ

    ・マンジャロ(チルゼパチド)はGLP-1とGIPの両受容体に作用するデュアル作動薬で、72週間で平均20.9%の体重減少というSURMOUNT-1試験の結果は肥満薬物療法史上最強クラスのデータです

    ・日本での肥満症治療薬としての保険適用はBMI35以上、またはBMI27以上+肥満関連合併症2つ以上という条件があり、誰でも処方を受けられる薬ではありません

    ・最も頻度の高い副作用は悪心・下痢・嘔吐などの消化器症状(30〜40%)ですが、多くは用量漸増と時間経過で軽減します。急性膵炎・甲状腺C細胞腫瘍は稀ですが、処方前の確認が必須です

    ・SURMOUNT-4試験では、マンジャロ中止後約1年で失った体重の約70%が戻ることが示されています。「やめれば元に戻る」という現実を直視することが重要です

    ・リバウンドを防ぐ唯一の方法は、薬を使っている間に食事・運動習慣を「移植」することです。マンジャロは習慣変革のきっかけであり、薬だけに依存する使い方は高価なリース契約に過ぎません

    ・体重減少の30〜40%が筋肉量の低下である点は見落とされがちです。タンパク質(体重1kgあたり1.2〜1.5g/日)の十分な摂取と筋力トレーニングの継続が、長期的な体重維持に不可欠です

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    ★よくあるご質問(FAQ)

    Q➤ マンジャロは糖尿病でなくても処方してもらえますか?

    A➤ 保険適用での処方には、BMI35以上またはBMI27以上+肥満関連合併症2つ以上という条件があります。糖尿病がなくてもこの条件を満たせば保険処方が可能です。条件を満たさない場合でも自由診療での処方を行うクリニックがありますが、医学的適応の評価・副作用モニタリング体制が十分かどうかを確認することが重要です。

    Q➤ マンジャロの吐き気はいつまで続きますか?

    A➤ 悪心(吐き気)は投与開始後・用量増量後の最初の2〜4週間が最も強く、多くの場合その後軽減します。用量を急に上げず4週ごとに段階的に増量すること、脂肪分の多い食事・大量飲食を避けること、少量ずつゆっくり食べることが吐き気の軽減に有効です。症状が強い場合は用量を下げることで対応できます。

    Q➤ マンジャロをやめた後、リバウンドしない方法はありますか?

    A➤ 薬を使っている期間中に食事・運動習慣を徹底的に変えることが唯一の方法です。具体的には、精製糖質の摂取を減らす・タンパク質と野菜を優先する食事パターンを習慣化する・週150分の有酸素運動と週2〜3回の筋力トレーニングを定着させることです。薬の力で食欲が抑えられているこの期間を「習慣移植期間」として最大限活用することが、リバウンドを防ぐ唯一の現実的な戦略です。

    Q➤ マンジャロと他の糖尿病薬を一緒に使っても大丈夫ですか?

    A➤ 多くの糖尿病薬との併用は可能ですが、インスリンやSU薬(スルホニルウレア薬:グリメピリドなど)と併用する場合は低血糖リスクが増大します。併用する場合はインスリン・SU薬の減量が必要なことがあり、必ず主治医の管理下で行ってください。SGLT2阻害薬・DPP-4阻害薬との併用は比較的安全です。

    Q➤ 手術や内視鏡検査の前にマンジャロを休薬する必要がありますか?

    A➤ はい、必要です。マンジャロは胃の排出を遅らせるため、絶食していても胃内に内容物が残存し誤嚥のリスクが生じる可能性があります。米国麻酔科学会は週1回投与のGLP-1受容体作動薬について待機的手術前の1週間休薬を推奨しています。手術・内視鏡検査が予定されている場合は、必ず担当医と麻酔科医に使用を申告してください。

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    参考文献

    Jastreboff AM, et al. "Tirzepatide Once Weekly for the Treatment of Obesity." New England Journal of Medicine, 2022. (SURMOUNT-1試験)
    Garvey WT, et al. "Tirzepatide once weekly for the treatment of obesity in people with type 2 diabetes(SURMOUNT-2)." Lancet, 2023.
    Wadden TA, et al. "Tirzepatide after intensive lifestyle intervention in adults with overweight or obesity(SURMOUNT-3)." Nature Medicine, 2023.
    Aronne LJ, et al. "Continued Treatment With Tirzepatide for Maintenance of Weight Reduction in Adults With Obesity(SURMOUNT-4)." JAMA, 2024.
    日本肥満学会「肥満症診療ガイドライン2022」
    日本糖尿病学会「糖尿病診療ガイドライン2024」
    Wilding JPH, et al. "Weight regain and cardiometabolic effects after withdrawal of semaglutide." Diabetes, Obesity and Metabolism, 2022.
    American Society of Anesthesiologists. "Guidance on Preoperative Discontinuation of GLP-1 Receptor Agonists." 2023.
    厚生労働省「チルゼパチド(マンジャロ皮下注)審査報告書」2023年.

    このコラムの執筆者

    院長画像

    院長:茂澤 幸右
    糖尿病学会所属・循環器内科専門医
    日本医科大学付属病院 循環器内科 非常勤講師


    循環器内科専門医として、糖尿病・高血圧・脂質異常症などの生活習慣病診療に従事。
    血糖や血圧の管理だけでなく、将来の心筋梗塞や心不全を防ぐ視点を大切に、
    日々の外来で患者さんと向き合っています。
    このコラムでは、健診結果の見方や最新の医療情報などを、
    外来で実際にお話ししている言葉で分かりやすく解説しています。

    【経歴】
    日本医科大学医学部 卒業
    日本医科大学大学院医学研究科(循環器内科学)修了

    【資格】
    医学博士
    循環器内科専門医
    内科認定医

    【所属学会】
    日本内科学会
    日本循環器学会
    日本心臓病学会
    日本糖尿病学会
    医師イラスト
    内科・生活習慣病のご相談

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