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院長コラム

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    2026/01/14

    体重が増えると、なぜ血圧・血糖・コレステロールが悪くなるのか

    体重が増えると、なぜ血圧・血糖・コレステロールが悪くなるのか
    ― 循環器内科医として外来診療で意識して説明していること ―

    健診結果を見ていると、
    まず体重やBMIの欄に目がいく方も多いと思います。
    一方で、
    「体重はそこまで増えていない」
    「BMIもそんなに高くない」
    そう感じて、あまり気にしないまま次のページをめくってしまう方も少なくありません。
    ですが、循環器内科の立場から見ると、
    体重とBMIは、その後に続く血圧・血糖・コレステロールを読む“前提条件”です。

    まずBMIをどう考えるか
    BMIは次の式で計算されます。
    BMI=体重(kg)÷身長(m)²
    健診結果には必ず載っている数字ですが、
    見方を間違えると意味を失います。
    日本人では一般的に、
    • BMI 22前後:最も病気が少ない
    • BMI 23を超える頃から:生活習慣病リスクが上がり始める
    • BMI 25以上:肥満と判定
    と考えられています。
    ここで大切なのは、
    「25を超えたら危険」ではなく、
    22からどれだけ離れてきているかです。
    実際、大規模な疫学研究では、
    BMIが5上がるごとに、心筋梗塞などの虚血性心疾患のリスクが約1.4倍になる
    ことが示されています。
    特に中年以降では、
    BMIが1〜2上がっただけでも、体の中では確実に変化が起きている
    と考えた方が安全です。

    体重増加は“内臓脂肪が増えた”という意味
    体重が増えるということは、
    単に脂肪がついた、という話ではありません。
    問題になるのは 内臓脂肪 です。
    内臓脂肪は、
    血圧・血糖・コレステロールのすべてに影響を与えます。
    いわば、生活習慣病の司令塔のような存在です。
    ここから先の話は、
    すべてこの内臓脂肪の増加が起点になります。

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    なぜ体重が増えると血圧が上がるのか

    体重、特に内臓脂肪が増えると、
    • 血管を収縮させるホルモンが増える
    • 体が塩分や水分をため込みやすくなる
    • 自律神経が緊張状態になりやすい
    といった変化が起こります。
    結果として、
    血管が常に締まった状態になり、血圧が上がります。
    疫学研究でも、
    体重が増えた人では 高血圧を新たに発症するリスクが約2倍 になることが示されています。
    外来で
    「体重が増えてから血圧も上がってきた」
    という方は、決して珍しくありません。
    この状態が続くと、
    心臓は強い圧に逆らって血液を送り続けることになり、
    心臓の壁が厚く、硬くなっていきます。

    コレステロールは“体重の履歴”を映す
    次に脂質です。
    コレステロールの項目を見るとき、
    循環器内科では LDLコレステロール を最も重視します。
    LDLは、
    前日の食事で大きく動く数字ではありません。
    これまでの生活習慣の積み重ねが反映されます。
    体重が増え、内臓脂肪が増えると、
    • 肝臓での脂質処理が乱れる
    • LDLが下がりにくくなる
    という変化が起こります。
    LDLが高い状態が続くと、
    心筋梗塞の発症リスクはおおよそ2倍以上になる
    ことが、多くの研究で示されています。
    「少し高いけど様子見」
    この判断を数年続けた結果、
    心筋梗塞で初めて見つかるケースも、実際にあります。

    血糖が悪くなる理由は“効きが悪くなる”から
    体重増加と血糖悪化の関係で重要なのは、
    インスリンの効きが悪くなるという点です。
    内臓脂肪が増えると、
    • インスリンが効きにくくなる
    • 食後の血糖が下がりにくくなる
    • 血糖の上下が大きくなる
    という状態になります。
    この血糖変動は、
    血管の内側をじわじわ傷つけ、動脈硬化を進めます。
    追跡研究では、
    体重増加が続いた人ほど
    経口薬だけでは血糖を保てなくなり、インスリン治療が必要になる割合が高い
    ことが示されています。
    「まだ糖尿病ではない」
    この段階で体重を戻せるかどうかが、
    将来インスリンを使うかどうかの分かれ目になります。

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    心筋梗塞・心不全との関係

    体重増加 → 血圧上昇 → 脂質異常 → 血糖異常
    この流れは、循環器内科では非常に一貫しています。
    動脈硬化が進めば、
    心筋梗塞のリスクは確実に上がります。
    さらに最近増えているのが、
    拡張不全型の心不全(心臓のポンプ力は保たれているにも関わらず起こるタイプの心不全)です。
    肥満や体重増加のある方では、
    心不全で入院するリスクが約1.5〜2倍
    になることが報告されています。
    外来で
    「最近、階段で息切れがする」
    という方を詳しく見ると、
    数年前から体重が増え、血圧が上がっているケースが非常に多いのが実情です。

    体重は「何kgか」より「どう変わったか」

    健診結果に過去の体重が並んでいる場合、
    ぜひ見てほしいのは 増え方 です。
    医学的には、
    • 体重が5%増加した時点で
    高血圧・糖尿病・脂質異常症のリスクが明確に上昇
    • 10%以上増加すると
    心筋梗塞や心不全などの心血管イベントリスクがはっきり高くなる
    ことが分かっています。
    「毎年1kgずつ増えている」
    これは循環器内科的には、
    かなりはっきりした危険信号です。
    一方で、
    5%体重を落とすだけで、血圧・血糖・コレステロールが同時に改善する
    ケースも少なくありません。

    当院の考え方
    当院では、体重やBMIを
    「見た目の問題」としては扱いません。
    血圧・血糖・コレステロールと同じ重さで、
    将来の心臓・血管のリスクを考える材料として評価します。

    上記長く少し危機感をあおるように書いてしまいましたが、裏を返すと体重を適切に管理することでたくさん飲んでいた生活習慣病の薬を減らすことが可能になり、中には薬から離脱できた患者さんも多くみて参りました。

    健診結果をお持ちいただければ、
    どこから手をつけるべきか、整理してお話しします。

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    参考文献

    Prospective Studies Collaboration. Lancet. 2009 Wilson PWF et al. Framingham Heart Study. Circulation Powell-Wiley TM et al. Obesity and HFpEF. Circulation. 2021 UK Prospective Diabetes Study (UKPDS). Lancet 日本肥満学会 肥満症診療ガイドライン2022 日本高血圧学会 高血圧治療ガイドライン2023 ________________________________________


    文責:茂澤メディカルクリニック南千住
    院長 茂澤 幸右(糖尿病学会所属・循環器内科専門医)