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院長コラム

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    2026/01/09

    ご家族に生活習慣病(糖尿病・高血圧・高脂血症)を持つ方の心得

    ― 家族歴は「体質」ではなく医学的に証明されたリスクです ―

    臨床現場では「両親が高血圧だから自分もそうなると思っている」「家族が糖尿病だから諦めている」という声をよく耳にします。
    しかし、医学的に家族歴は“運命”ではありません。
    確かにリスクは上がるが、正しい生活習慣と早めの検査で大きく抑え込める──これが現代のエビデンスです。

    家族歴とは、医学的にFamily History(FH)と呼ばれ、循環器内科の世界では心筋梗塞・脳卒中のリスク因子として概念が確立されています。

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    🔍家族歴があると実際どのくらいリスクが上がる?

    少し難しい内容になるので読みやすく箇条書きにせず、あえて流れで理解できるように書きます。
    例えば、親や兄弟が“若くして”心筋梗塞を起こしている場合、本人の発症リスクは 約1.7倍に増えます(INTERHEART Study)。
    高血圧の場合は、両親とも高血圧だと本人も約2倍発症しやすく、しかも「若いうちから血圧が高めになる」傾向があります。
    糖尿病はさらに顕著で、片親に糖尿病があるだけで1.7倍、両親とも糖尿病なら3倍以上
    そして脂質異常症、とくに家族性高コレステロール血症(FH)の場合は、治療しなければ心筋梗塞のリスクが20倍以上に跳ね上がることが分かっています。
    こう並べてみると怖く感じますが、安心してほしいのは
    「知っていれば十分に対策できるリスク」
    だという点です。

    🫀 では、その“対策”とは何か?

    ここからが循環器内科専門医として一番伝えたい部分です。
    生活習慣病は、実は“数値に異常が出る10年前から”血管の内側では動脈硬化が静かに進んでいます。
    その早い段階を見逃さないために、家族歴のある方ほどご自身の 。「数値を知ること」 。が最大の予防になります。

    📍 ① ベースラインを作る(これが最強の予防)


    血圧、血糖(空腹時血糖・HbA1c)、脂質(LDL・TG)を一度きちんと測定し、
    “あなたの基準値=ベースライン” 。を作ります。
    「症状がないから検査していない」「健康診断の数値を深く理解していない」
    というケースが非常に多い印象です。
    ベースラインがあると
    ・わずかな変化でも早期に気付ける
    ・治療が必要なタイミングが明確になる
    というメリットがあります。

    📍 ② 血糖を“急上昇させない食べ方”を身につける


    同じ食事でも、血管の負担は「血糖の上がり方」で大きく変わります。
    専門的には。血糖変動=血管内皮のストレス。であり、これが動脈硬化の引き金になります。
    具体的には
    ・白米 → 雑穀米・玄米
    ・お菓子パン → ナッツ・ヨーグルト
    ・ジュース → 無糖飲料
    という小さい工夫が、実は。薬より効果が出やすい人もいるほど大切です。

    📍 ③ “夜の血圧”を対策するのが最も効果的


    医学的には、夜間高血圧が心血管イベントと最も強く関連します。
    当院でも、「昼は普通だけど、夜だけ血圧が高い患者」
    が非常に多いです。
    夜間高血圧の主な原因は
    ・夕食の塩分
    ・寝酒
    ・睡眠不足
    です。

    📍 ④ 運動は“短くてもいいが、回数が大事”


    動脈硬化を防ぐのは運動そのものより、血管への刺激回数(頻度) です。
    1日30分歩けない日があっても問題ありません。
    10分 × 2〜3回でも血管の柔軟性は改善します。
    南千住は隅田川沿いや駅周辺など、歩きやすい環境があるので
    「毎日少しだけ歩く習慣」をつけるには最適な地域です。

    まとめ:家族歴は“知っていれば守れる”リスクです

    あなたの体質は変えられません。
    でも、血管を守る生活習慣は今日から変えられます。

    ・家族歴のリスク
    ・数値のチェック
    ・血糖変動を抑える食事
    ・夜間血圧の対策
    ・小分けの運動習慣

    これらを整えるだけで、心筋梗塞・脳卒中のリスクは大きく下がります。
    南千住エリアで「家族が病気だから自分も…」と不安を感じている方は、
    一度検査だけでもお気軽にご相談ください。
    予防は、早く始めた人ほど大きな恩恵を得られます。

    参考文献

    1.Yusuf S, et al. Effect of modifiable risk factors associated with myocardial infarction. Lancet. 2004 (INTERHEART).
    2.Kahan T, et al. Genetic influences on blood pressure in the Framingham Offspring Study. Hypertension. 2005.
    3.Meigs JB, et al. Parental transmission of type 2 diabetes. J Clin Endocrinol Metab. 2000.
    4.Nordestgaard BG, et al. Familial hypercholesterolaemia and risk of ischemic heart disease. BMJ. 2012.



    文責:茂澤メディカルクリニック南千住
    院長 茂澤 幸右(糖尿病学会所属・循環器内科専門医)