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院長コラム

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    2026/01/09

    睡眠不足が高血圧・糖尿病を悪化させる理由

    ― 冬に症状が悪化しやすい医学的背景を、循環器内科専門医の院長が解説 ―**

    冬は血圧が上がりやすく、糖尿病のコントロールが乱れやすい季節です。寒さによる血管収縮が有名ですが、臨床現場で診ていると、実はもう一つ重要な要因が存在します。それが “睡眠不足” と “睡眠の質の低下” です。
    私は循環器内科専門医として日々外来で多くの患者さんを診ていますが、冬場になると
    「朝の血圧が安定しない」
    「以前より血糖値が下がりにくい」
    「頭痛・動悸が増える」
    といった訴えが明らかに増えるのを実感します。なかでも診察を丁寧に聞き取ると、多くの患者さんに共通しているのが “睡眠の乱れ” です。

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    ■ 睡眠不足が血圧に与える影響

    睡眠が不足すると自律神経が乱れ、交感神経が過剰に優位になります。その結果

    •アドレナリン
    •ノルアドレナリン
    •コルチゾール

    といった “血圧を上昇させるホルモン” が増加します。
    疫学研究では、
    睡眠が 6 時間未満の人は高血圧の発症リスクが約 1.7 倍
    になると報告されています。睡眠不足は一晩で血圧を上げるだけでなく、慢性的に続くと高血圧体質を強化してしまいます。

    ■ 睡眠不足が糖尿病を悪化させる理由

    睡眠不足はインスリンの効きを低下させ、血糖値を下げる力を弱めてしまいます。
    具体的には以下の現象が起こります。
    •インスリン抵抗性が上昇
    •朝の空腹時血糖が上がりやすい
    •夜間に交感神経が優位になり血糖が乱高下する
    •食欲ホルモン(グレリン)が増えて間食が増える
    実際、糖尿病患者さんでも「最近よく眠れない」と話す方は血糖推移が乱れやすく、冬は特に顕著です。

    冬に睡眠の質が落ちる理由(医師視点)

    冬は・・・
    •寒さによる筋の過緊張
    •日照時間の短さ
    •軽い運動量の低下
    •入浴後との温度差
    などが重なり、睡眠が浅くなりやすい季節です。
    また、年末年始の生活リズムの乱れや、ストレス増加も睡眠の質低下に拍車をかけます。結果として、血圧と血糖の管理が難しくなるという悪循環に陥りやすいのです。

    冬に実践できる “医師が推奨する” 睡眠改善ポイント

    患者さんにもよくお伝えしている、今日からできる改善策です。
    寝る 1 時間前はスマホ・タブレットを控える(ブルーライト軽減)
    室温は 18〜20℃を維持し、布団・寝具とのバランスを整える
    夕方に 10 分だけでいいので外を歩き、体内時計をリセット
    就寝前の間食・アルコールを控える
    寝る90分前の入浴で深部体温を自然に下げる

    小さな改善でも、血圧・血糖が安定する患者さんは多く、「冬の不調は睡眠から整える」が非常に有効です。

    当院からのメッセージ

    睡眠は薬や食事療法と同じレベルで、高血圧・糖尿病管理の大きな柱です。
    冬に体調が悪いと感じやすい方は、「睡眠」を見直すだけで改善の糸口が見つかることがあります。
    当院では、高血圧・糖尿病・動悸・胸の違和感などの循環器疾患全般に対応しています。冬場の体調変化で気になることがあれば、早めにご相談ください。

    参考文献

    1.Spiegel K, et al. Impact of sleep debt on metabolic and endocrine function. The Lancet. 1999.
    2.Gangwisch JE, et al. Short sleep duration as a risk factor for hypertension. Hypertension. 2006.
    3.Tasali E, et al. Slow-wave sleep and the risk of type 2 diabetes. PNAS. 2008.
    4.Cappuccio FP, et al. Quantity and quality of sleep and incidence of type 2 diabetes. Diabetes Care. 2010.
    5.Irwin MR. Sleep and inflammation: partners in sickness and in health. Nature Reviews Immunology. 2019.
    6.Taheri S, et al. Short sleep duration is associated with reduced leptin and elevated ghrelin. PLOS Medicine. 2004.

    このコラムの執筆者

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    院長:茂澤 幸右
    糖尿病学会所属・循環器内科専門医


    循環器内科専門医として、糖尿病・高血圧・脂質異常症などの生活習慣病診療に従事。
    血糖や血圧の管理だけでなく、将来の心筋梗塞や心不全を防ぐ視点を大切に、
    日々の外来で患者さんと向き合っています。
    このコラムでは、健診結果の見方や最新の医療情報などを、
    外来で実際にお話ししている言葉で分かりやすく解説しています。

    【経歴】
    日本医科大学医学部 卒業
    日本医科大学大学院医学研究科(循環器内科学)修了

    【資格】
     医学博士
    循環器内科専門医
    内科認定医

    【所属学会】
    日本内科学会
    日本循環器学会
    日本心臓病学会
    日本糖尿病学会
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