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院長の生活習慣病コラム

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    2026/09/10

    マンジャロの「危ない使われ方」——やせ型女性の不適切使用・不正規品・期限切れ品の流通まで、社会問題の実態を警告する

    はじめに——「痩せ薬」として消費されるマンジャロに、循環器専門医として警告する

    前回のコラム㊵で、マンジャロ(チルゼパチド)の正しい効果・処方条件・副作用・リバウンドの真実をお伝えしました。今回はその続編として、あまり表に出てこない「マンジャロの危ない使われ方」について、正面から取り上げます。

    率直に言います。マンジャロをめぐる現状は、医療者として深刻な懸念を抱かずにはいられない状況になっています。

    SNSには「マンジャロで10kg痩せた」「注射一本で別人になった」という投稿が溢れています。やせ型の若い女性が「もっと細くなりたい」という目的でマンジャロを求めるケースが急増しています。正規の処方ルートを経ず、海外から個人輸入したり、出所不明の格安品をインターネットで購入したりする人が後を絶ちません。期限切れ間近の製品が格安で流通しています。そして、こうした不適切な使用が引き起こした健康被害が、実際に報告されています。

    マンジャロは、正しく使えば糖尿病・肥満という深刻な疾患を持つ患者さんの人生を変え得る、本当に優れた薬です。だからこそ、その誤用・乱用が引き起こす問題を、きちんと伝えなければならないと感じています。

    今回は、マンジャロをめぐる社会問題の実態を、できるだけ具体的に、そして警告として届くように解説します。

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    やせ型女性のマンジャロ不適切使用——SNSが加速させる「痩せ薬」消費の現実

    「オゼンピックフェイス」から始まったセレブの痩せ薬文化

    マンジャロ・ゼップバウンドの不適切使用問題を理解するには、その前史から話を始める必要があります。

    2022年頃から米国で「オゼンピックフェイス(Ozempic Face)」という言葉がSNSで広まりました。セマグルチド(オゼンピック)という糖尿病治療薬を痩せるために使用したセレブリティが、急激な体重減少によって顔がげっそりしたように見える現象を指す言葉です。

    ハリウッドスター・モデル・インフルエンサーたちが「オゼンピックで痩せた」と公言(または噂され)、糖尿病でもない健常者が体重を落とすためにGLP-1受容体作動薬を使用することが、米国を中心に急速に広まりました。

    この流れがマンジャロ・ゼップバウンドの登場によってさらに加速しました。オゼンピックを上回る体重減少効果がメディアで報じられ、「次世代の痩せ薬」として世界中で注目を集めます。2023〜2024年にかけて、日本でも同様のトレンドがSNSを中心に拡大しました。

    日本のSNSに広がる「マンジャロダイエット」

    日本のInstagram・TikTok・X(旧Twitter)には、「マンジャロ」「チルゼパチド」「痩せ注射」というハッシュタグで無数の投稿が存在します。

    その内容は多岐にわたります。

    ・「BMI18なのに注射してみた」という体験談
    ・「クリニックでもらえなかったからネットで買った」という報告
    ・「1本あたり◯◯円で売ります」という個人売買の投稿
    ・「副作用は吐き気だけだった」という軽い紹介
    ・「食欲が消えた、最高」という感想

    こうした投稿が積み重なることで、マンジャロが「誰でも使える手軽な痩せ薬」として認識されていきます。しかし、これらの投稿には重大な情報が欠落しています。処方条件・副作用の詳細・禁忌・適切な用量管理・モニタリングの必要性——こうした医療として本来必須の情報が、一切含まれていません。

    やせ型女性への処方の問題——摂食障害との親和性

    最も深刻な問題の一つが、医学的に肥満ではないやせ型の女性がマンジャロを使用するケースです。

    BMI18〜22程度の女性が「もっと細くなりたい」「5kg痩せたい」という目的でマンジャロを使用することは、以下の複数の理由から非常に危険です。

    ①適応外使用のリスク:
    BMI27未満・合併症なしの場合は医学的な肥満症治療の適応がなく、薬によって得られるベネフィットよりリスクが上回る可能性が高いです。

    ②低栄養・筋肉量低下のリスク:
    すでに適正体重または低体重の人がさらに体重を落とすと、筋肉量の著しい低下・骨密度の低下・月経異常・免疫機能の低下・脱毛などが起きます。前回コラム㊵で述べた通り、マンジャロによる体重減少の30〜40%は筋肉量の低下です。もともと脂肪の少ないやせ型の女性が使用すれば、失うのは主に筋肉になります。

    ③摂食障害との親和性:
    「もっと痩せたい」「食欲をゼロにしたい」という使用動機は、摂食障害(拒食症・過食症)の思考パターンと重なります。マンジャロが引き起こす強い食欲抑制は、すでに摂食障害を抱えている方や、その傾向がある方の症状を著しく悪化させる可能性があります。

    実際、米国食品医薬品局(FDA)には、GLP-1受容体作動薬使用後に自殺念慮・自傷行為・摂食障害の悪化が報告されており、FDAはこれらの薬剤と精神的健康への影響について調査を継続しています(FDA Drug Safety Communication, 2023)。欧州医薬品庁(EMA)も同様の安全性評価を実施しました。

    ④若年女性特有のリスク——妊娠・授乳への影響:
    マンジャロは動物実験で胎児毒性が確認されており、妊娠中・授乳中は禁忌です。また、マンジャロは経口避妊薬(ピル)の吸収を変化させる可能性があり、避妊効果が低下するリスクが指摘されています。性的活動のある若い女性がマンジャロを使用する場合、避妊方法の変更(コンドームなど確実な方法への切り替え)が必要です。これを知らずに使用しているケースが多いと考えられます。

    「クリニックで断られたからネットで買った」という現実

    正規ルートでの処方を断られた場合に、インターネット・個人売買・海外個人輸入でマンジャロを入手しようとする人が一定数います。

    この問題は次の章で詳しく扱いますが、ここで強調しておきたいことがあります。「クリニックで断られた」という事実は、「この人にはマンジャロが医学的に必要ない、または危険」というメッセージです。それを無視して入手しようとすることは、医療的な判断を自分の欲求で上書きすることであり、重大な健康リスクを自ら引き受けることになります。

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    不正規品・偽造品・期限切れ品の流通——「格安マンジャロ」が命を脅かす理由

    世界的なマンジャロ需要爆発が生んだ「偽造品市場」

    マンジャロの爆発的な需要増加は、世界中で深刻な供給不足を引き起こしました。米国・欧州では正規品の入手が困難な時期が続き、日本でも一時的な供給逼迫が報告されました。

    需要が供給を大幅に上回る状況は、必然的に偽造品・不正規品市場を生み出します。世界保健機関(WHO)は2023年、セマグルチド(オゼンピック)の偽造品・不正規品が世界各国で流通していることを公式に警告し(WHO Medical Product Alert, 2023)、マンジャロを含むGLP-1系薬剤についても同様の注意喚起を発しています。

    日本国内で流通している「問題のあるマンジャロ」の種類

    日本国内で問題視されているマンジャロ関連製品は、大きく以下のカテゴリーに分類されます。

    ①海外からの個人輸入品

    日本の薬事法では、個人が自己使用目的で海外から医薬品を輸入することは一定条件のもとで認められていますが、医師の処方なしに処方薬を購入・使用することは違法です。海外のオンライン薬局・個人売買サイトから「日本未承認の用量・製品」を購入するケースも報告されています。

    問題点:
    ・製造環境・品質管理が日本の薬事基準を満たしていない可能性
    ・輸送中の温度管理が不適切な可能性(マンジャロは冷蔵保存2〜8℃が必須)
    ・本物に見せかけた偽造品の可能性
    ・副作用が出ても医療的サポートを受けにくい

    ②コンパウンドファーマシー(調合薬局)からの製品

    米国では、供給不足を理由に一部の「調合薬局(compounding pharmacy)」がチルゼパチドを独自に調合・販売しているケースが問題になっています。これらは正規のイーライリリー社製マンジャロとは異なる製品であり、品質・有効性・安全性が保証されていません。

    FDAは2024年、チルゼパチドの調合品について「品質・安全性の懸念がある」として消費者への警告を発しています(FDA Safety Alert, 2024)。

    ③期限切れ間近・期限切れの正規品の格安流通

    これは特に注意が必要な問題です。正規品であっても、有効期限が迫っている製品や期限切れの製品が、格安で流通しているケースが報告されています。

    マンジャロの有効期限は製造から約18〜24ヶ月です。適切に保管された製品であれば期限内は有効性・安全性が保証されますが、期限切れの製品では有効成分(チルゼパチド)の分解・変性が起きている可能性があります。

    「正規品だから安全」という認識は、期限切れ品には当てはまりません。期限切れの薬は、有効性が低下しているだけでなく、分解産物による予期しない副作用・有害反応が生じる可能性があります。

    「格安で売ります」という個人売買の投稿の背後に、こうした期限切れ品・管理不良品が潜んでいる可能性を、消費者は認識しなければなりません。

    ④インターネット上の個人売買

    フリマアプリ・SNS・掲示板での個人間売買は、最も管理が行き届かない流通経路です。

    ・出所・製造環境・保管状況が一切不明
    ・偽造品・類似品(有効成分が異なる・含有量が異なる)の可能性
    ・輸送中の温度管理が行われていない可能性
    ・使用済み注射器の再販(非常に稀ですが報告例あり)の可能性

    医薬品の個人間売買は薬機法違反であり、売り手・買い手ともに法的リスクがあります。

    温度管理の破綻——「冷蔵必須」の薬を常温で売る問題

    マンジャロは冷蔵保存(2〜8℃)が必須の製品です。室温(最大30℃)での保存は最大21日間が上限とされており、それを超えると有効性の低下が生じます。凍結は品質を損なうため禁止です。

    これは非常に厳格な温度管理要件ですが、個人輸入・個人売買・不正規流通の過程でこの要件が守られる可能性は極めて低いです。

    ・海外からの郵便・宅配では温度管理がされていないことがほとんど
    ・フリマアプリでの発送では通常梱包で送られる
    ・長距離輸送中に高温環境にさらされる可能性

    外見上は正規品と変わらないプレフィルド注射ペンでも、温度管理が破綻した製品は有効成分が変性・分解している可能性があります。「打っても全く効果がなかった」という報告の一部は、こうした温度管理不良品を使用したケースかもしれません。そして更に危険なのは、変性した成分が予期しない免疫反応・アレルギー反応を引き起こす可能性があることです。

    偽造品の見分け方——正規品の確認ポイント

    日本で正規流通しているマンジャロ(イーライリリー社製)には以下の特徴があります。

    ・製造販売承認番号が記載された日本語の添付文書が同梱
    ・製品ラベルに製造番号・有効期限が明記
    ・専用のプレフィルド注射ペン(KwikPen)を使用
    ・医療機関・調剤薬局での処方・調剤を経て患者に渡る

    これらのルートを経ていない製品——インターネット購入・個人売買・海外発送——は、たとえ外見が本物に見えても、正規品である保証がありません。

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    海外での規制強化と日本への示唆——「野放し」から「管理強化」へ 米国での規制強化の動き

    マンジャロ・ゼップバウンドの不適切使用問題に対し、米国では複数の規制機関が対応を強化しています。

    FDAの動き:
    FDAは2024年、チルゼパチドの調合品(コンパウンド薬局製)について消費者への警告を発し、正規製品以外の使用を控えるよう勧告しました。また、GLP-1受容体作動薬の精神的健康への影響(自殺念慮・摂食障害との関連)について継続的な安全性評価を実施しています。

    DEA(麻薬取締局)の関与:
    オンラインでのGLP-1受容体作動薬の不正販売に対し、DEAが捜査・摘発に乗り出しているケースが報告されています。医薬品の不正流通は連邦法違反であり、刑事罰の対象になります。

    民間保険会社の対応:
    肥満治療目的のGLP-1受容体作動薬を保険適用外とする保険会社が増加しており、高額な自己負担を避けようとする消費者が不正規品に流れるという悪循環も生まれています。

    英国・欧州の動き

    英国では2023年、医師・薬剤師の処方なしにGLP-1受容体作動薬を販売するオンライン薬局への規制強化が行われました。欧州医薬品庁(EMA)はセマグルチド・チルゼパチドの偽造品流通について加盟国に対して警告を発し、正規流通経路の確認を徹底するよう求めています。

    英国医薬品・医療製品規制庁(MHRA)は2024年、SNSでのGLP-1受容体作動薬に関する誇大広告・不正販売について監視を強化し、違反事例の摘発を進めています。

    韓国・台湾——アジアでの問題

    日本の近隣国でも同様の問題が発生しています。

    韓国では、医師の処方なしにGLP-1受容体作動薬を販売するクリニック・薬局への取り締まりが強化されました。SNSでの「다이어트 주사(ダイエット注射)」という検索ワードに関連する不適切なマーケティングへの規制も進んでいます。

    台湾では、輸入規制を逃れた偽造GLP-1受容体作動薬が複数の薬局で発見され、食品薬物管理署が回収命令を発しました。

    日本への示唆——規制が追いついていない現実

    日本では現時点(2024年)で、GLP-1受容体作動薬の不正流通・不適切使用に対する規制は、欧米と比較して整備が遅れています。

    ・SNSでのマンジャロ個人売買投稿の取り締まりは十分ではない
    ・海外個人輸入の監視・摘発が追いついていない
    ・「痩せ注射」として提供する一部クリニックへの監督が不十分
    ・消費者への正確な情報提供が不足している

    厚生労働省は2024年にGLP-1受容体作動薬の適正使用に関する注意喚起を発出していますが、実効的な規制強化はこれからという段階です。

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    正規の医療を受けることの意味——院長が伝えたいこと

    「安く手に入れたい」という気持ちの裏にあるリスク

    マンジャロの正規処方を受けた場合のコスト(自費診療)は、月額3〜5万円程度が一般的です。これは決して安くはありません。一方、個人輸入・個人売買では半額以下で入手できるケースもあります。

    「同じ薬なら安い方がいい」——この気持ちはよくわかります。しかし、その「安さ」には以下のコストが含まれていません。

    ・処方前の包括的な検査(血糖・肝腎機能・甲状腺・膵酵素)の費用と安全確認
    ・副作用発生時の医療的対応・管理
    ・適切な用量管理と漸増プロトコルの実施
    ・生活習慣指導との組み合わせ
    ・温度管理・品質保証された製品の保証

    不正規品を使用して重篤な副作用が起きた場合、その医療費は全て自己負担になります。急性膵炎で入院した場合、治療費は数十万〜百万円に達することもあります。「安く手に入れた」ことで生じた健康被害のコストは、正規処方の費用を大きく上回る可能性があります。

    マンジャロに適切に向き合うための5つの原則

    私が外来でマンジャロに関心を持つ患者さんにお伝えしている原則をまとめます。

    原則①:必ず医師の診察を受けてから使用する

    血液検査で禁忌がないことを確認し、適切な用量から開始し、副作用モニタリングを受けながら使用することが最低限の安全基準です。「打つだけ」の処方は医療ではありません。

    原則②:処方元の医療機関の体制を確認する

    処方前に血液検査を行うか・副作用発生時に対応できるか・定期的なフォローアップがあるか——これらを確認した上で処方を受けてください。「問診票だけで当日処方」というクリニックは慎重に判断してください。

    原則③:インターネット・個人売買・海外個人輸入では絶対に購入しない

    品質・有効性・安全性が保証されない製品を体に入れることは、何が起きても不思議ではありません。医薬品の個人間売買は薬機法違反であり、法的リスクも伴います。

    原則④:「格安」「お得」という情報には疑いの目を持つ

    期限切れ間近・温度管理不良・偽造品の可能性が高いです。正規品が格安で入手できる合理的な理由は存在しません。

    原則⑤:BMI・体重が正常範囲内の場合は使用しない

    医学的な肥満症治療の適応がない方がマンジャロを使用することは、得られるベネフィットよりリスクが大幅に上回ります。「もっと痩せたい」という目的での使用は、健康を損なう可能性があります。

    摂食障害・精神的健康への配慮

    マンジャロの使用を検討している若い女性に、特にお伝えしたいことがあります。

    「食欲をなくしたい」「もっと痩せたい」という強い欲求が、摂食障害(拒食症・過食症)の症状と重なっている場合、マンジャロの使用は症状をさらに悪化させるリスクがあります。

    自分の体型・体重に対して強い不満・不安・こだわりがある場合は、マンジャロを求める前に、まず精神科・心療内科・摂食障害の専門家に相談することを強くすすめます。薬で食欲を消すことは、根本にある心理的な問題を解決しません。

    正しい情報を持った上での選択を

    マンジャロは、正しく使えば糖尿病・肥満という深刻な疾患を持つ患者さんの人生を変え得る、本当に優れた薬です。私はこの薬の可能性を高く評価しています。

    しかしだからこそ、誤用・乱用・不正規流通という問題に対して声を上げなければなりません。「夢の痩せ薬」として消費されることで、この薬の本来の価値が損なわれ、本当に必要な患者さんへのアクセスが妨げられることを、医療者として懸念しています。

    南千住・荒川区でマンジャロに関心をお持ちの方・糖尿病・肥満の管理について正確な情報を求めている方は、まずご相談ください。正しい知識と適切な医療的管理のもとで、この薬の恩恵を安全に受けていただくための支援をします。Web予約はmozawa-medical.comから24時間受け付けています。

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    院長の結論

    マンジャロをめぐる現状を見ていると、医療者として複雑な思いを抱きます。これだけ強力なエビデンスを持つ薬が、「痩せ薬」として消費され、出所不明の格安品がSNSで売買され、医学的適応のない若い女性が健康を損なうリスクを冒している——これは薬そのものの問題ではなく、情報と規制の問題です。

    私がこのコラムで最も伝えたいことは一つです。マンジャロは医師の管理下で、適切な患者に、適切な用量で、生活習慣改善と組み合わせて使われるときにのみ、その真の価値を発揮します。インターネットで格安品を買い、一人で打ち、副作用が出ても相談できる医師がいない——この状況は、薬の恩恵ではなくリスクだけを受け取ることです。

    「安く手に入れたい」「クリニックで断られたから別の方法を探す」という衝動は理解できます。しかし、自分の体に何を入れるかという判断だけは、コストや利便性ではなく、安全性を最優先にしてください。

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    ★まとめ

    ・BMI正常範囲内のやせ型女性がマンジャロを「もっと痩せたい」という目的で使用することは、低栄養・筋肉量低下・月経異常・摂食障害の悪化などの深刻なリスクをもたらします

    ・海外からの個人輸入・インターネット個人売買・コンパウンドファーマシー製品は、品質・有効性・安全性が保証されません。医薬品の個人間売買は薬機法違反です

    ・「格安マンジャロ」には期限切れ間近・温度管理不良・偽造品の可能性があります。マンジャロは冷蔵保存(2〜8℃)が必須であり、温度管理が破綻した製品は有効成分が変性している可能性があります

    ・WHO・FDA・EMAなど主要規制機関がGLP-1受容体作動薬の偽造品・不正規品について公式警告を発しています。日本での規制整備はこれからという段階です

    ・FDAはGLP-1受容体作動薬と自殺念慮・摂食障害悪化との関連について安全性評価を継続しています。強い痩身願望がある方は精神科・心療内科への相談を優先してください

    ・マンジャロを使用する場合は、処方前の包括的な血液検査・適切な用量漸増・定期的な副作用モニタリング・生活習慣指導との組み合わせが必須です。「打つだけ」の処方は医療ではありません

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    ★よくあるご質問(FAQ)

    Q➤ 海外から個人輸入したマンジャロを使用しても大丈夫ですか?

    A➤ 大丈夫とは言えません。個人輸入品は日本の薬事基準による品質管理がされておらず、輸送中の温度管理(冷蔵2〜8℃が必須)が保証されない点が最大の問題です。温度管理が破綻した製品は有効成分が変性している可能性があり、効果がないだけでなく予期しない有害反応が生じる恐れがあります。また医師の管理なしに使用することで、副作用発生時の対応が遅れるリスクもあります。

    Q➤ フリマアプリでマンジャロが格安で売られていますが、購入してもいいですか?

    A➤ 絶対に購入しないでください。医薬品の個人間売買は薬機法違反です。格安で販売されているマンジャロには、期限切れ品・温度管理不良品・偽造品・有効成分が異なる類似品の可能性があります。たとえ本物であっても、保管状況が不明な製品を体に注射することは非常に危険です。

    Q➤ 「痩せ注射」として自費で処方してくれるクリニックが増えていますが、どこでも安全ですか?

    A➤ クリニックによって体制に大きな差があります。安全な処方には、処方前の包括的な血液検査(血糖・腎機能・肝機能・甲状腺・膵酵素)による禁忌確認、少量からの段階的な増量、副作用発生時の対応体制、定期的なフォローアップが必要です。問診票だけで当日処方・副作用フォローなしのクリニックは、医療的な安全性の観点から慎重に判断してください。

    Q➤ BMI22の女性ですが、5kg痩せるためにマンジャロを使用したいです。問題ありますか?

    A➤ 医学的観点から強くおすすめしません。BMI22は正常体重であり、マンジャロの医学的適応(BMI35以上または27以上+合併症2つ以上)を満たしていません。適正体重から更に体重を落とすと、筋肉量・骨密度の低下・月経異常・免疫機能の低下が起きる可能性があります。「もっと痩せたい」という強い欲求がある場合は、摂食障害の専門家への相談を優先してください。

    Q➤ マンジャロの偽造品かどうか、自分で確認する方法はありますか?

    A➤ 外見だけで正規品と偽造品を見分けることは、一般の方には困難です。最も確実な方法は「正規の医療機関・調剤薬局を通じて入手する」ことだけです。日本の正規品には日本語の添付文書・製造番号・有効期限の明記があります。インターネット・個人売買で入手した製品は、外見が本物に見えても正規品である保証がありません。

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    参考文献

    WHO Medical Product Alert. "Falsified Semaglutide(Ozempic)identified in multiple countries." World Health Organization, 2023.
    FDA Drug Safety Communication. "FDA evaluating the risk of serious breathing problems with seizure medications gabapentin and pregabalin." U.S. Food & Drug Administration, 2023.
    FDA Safety Alert. "Compounded Tirzepatide Products: FDA Warns Consumers and Health Care Providers." U.S. Food & Drug Administration, 2024.
    European Medicines Agency. "GLP-1 receptor agonists: EMA's safety review of suicidal thoughts and self-harm." EMA, 2023.
    MHRA. "GLP-1 receptor agonists: UK medicines regulator strengthens advice." Medicines and Healthcare products Regulatory Agency, 2024.
    Jastreboff AM, et al. "Tirzepatide Once Weekly for the Treatment of Obesity." New England Journal of Medicine, 2022.
    厚生労働省「GLP-1受容体作動薬の適正使用に関する注意喚起」2024年.
    日本肥満学会「肥満症診療ガイドライン2022」
    American Society of Anesthesiologists. "Guidance on Preoperative Discontinuation of GLP-1 Receptor Agonists." 2023.
    日本摂食障害学会「摂食障害の理解と対応ガイドライン」2021年版.

    このコラムの執筆者

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    院長:茂澤 幸右
    糖尿病学会所属・循環器内科専門医


    循環器内科専門医として、糖尿病・高血圧・脂質異常症などの生活習慣病診療に従事。
    血糖や血圧の管理だけでなく、将来の心筋梗塞や心不全を防ぐ視点を大切に、
    日々の外来で患者さんと向き合っています。
    このコラムでは、健診結果の見方や最新の医療情報などを、
    外来で実際にお話ししている言葉で分かりやすく解説しています。

    【経歴】
    日本医科大学医学部 卒業
    日本医科大学大学院医学研究科(循環器内科学)修了

    【資格】
    医学博士
    循環器内科専門医
    内科認定医

    【所属学会】
    日本内科学会
    日本循環器学会
    日本心臓病学会
    日本糖尿病学会
    医師イラスト
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