院長コラム
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院長コラム2026/01/09
糖尿病と心臓病の深い関係
― 循環器内科専門医である院長が、「血管が傷むしくみから心臓発作まで」をわかりやすく解説 ―
糖尿病は「血糖が高い病気」と理解されることが多いですが、医学的には “血管の病気(動脈硬化が進みやすい状態)” でもあります。
血糖値が高い状態が続くと、血管の内側が少しずつ傷つき、まるでホースの内側にサビがたまるように血管が硬く・狭くなっていきます。
この“血管の傷み”が進行することで、心臓の血管が詰まりやすくなり、狭心症・心筋梗塞といった重大な心臓病につながります。
実際、糖尿病の方は 心臓病(心血管疾患)の発症リスクが 2〜3 倍に上がることが知られています。血糖値だけでなく、血圧・脂質が高い人ではリスクはさらに動脈硬化が加速します。
■ なぜ糖尿病で血管が傷むのか?(医師が噛み砕いて解説)
血糖値が高い状態が続くと、体内では次のような変化が起こります。
• 血管の内皮細胞が傷つきやすくなる
→ 血管の“つるつるの内側”が荒れやすくなる
• 炎症反応が続き、動脈硬化が進行する
• LDLコレステロールが血管壁に入り込みやすくなる
• 血栓(血の固まり)ができやすくなる
これらが重なると、心臓の血管が徐々に細くなり、ついには完全に詰まることで心筋梗塞が起こります。
イメージとしては、
“少しずつ管の内側に汚れがたまり、やがて水の流れを止めてしまう”
そんな状態です。■ 糖尿病 × 心臓病のリスクが高まる人は?
以下の項目が複数当てはまる方は特に注意が必要です。
• 血糖値が高い、血液検査項目のHbA1cが上がってきている
• 家庭血圧が高い
• LDLコレステロール値が高い
• 喫煙習慣がある
• 家族に心臓病の人がいる
• 運動不足・肥満ぎみ
• 冬場に胸の違和感が増える
これらはすべて “動脈硬化を進める要因”であり、糖尿病と組み合わさることでリスクは加速します。■ 心臓病の初期症状(見逃されやすいポイント)
糖尿病の方は 神経障害 により痛みを感じにくいことがあります。
そのため心筋梗塞でも「痛くない心筋梗塞」を起こすケースが決して少なくありません。
よくある“サイン”は次の通りです。
• 以前より疲れやすい
• 少し歩くと息切れが出る
• 胸の圧迫感・重さ
• 胃の不快感や胸やけのような痛み
• 力が入りにくい・立ちくらみ
• 夜間に息苦しくなる
「胸が痛くないから大丈夫」と思い込むと危険です。■ 当院での診療(循環器×糖尿病の専門的なアプローチ)
当院では、
“血糖・血圧・脂質の総合管理” と “血管の状態チェック”
を組み合わせることで、心臓病の発症を防ぐ医療を行っています。
実施している検査
• 心電図
• 頸動脈エコー
• 血液検査(血糖・HbA1c・脂質・炎症マーカー)
• 心臓エコーとくに 頸動脈エコー は血管の“動脈硬化の進み具合”を可視化できるため、糖尿病患者さんに非常に有益です。
頸動脈という心臓から脳に血液を送る大事な血管は首の表面から近いところに位置していることからエコー検査で性状を観察するのに非常に適しています。
全身の動脈硬化は原則一様に進行するため、この頸動脈の状態を把握することが重要になってきます。
治療・生活指導
• 血糖・血圧・脂質の薬剤調整
• 食事内容の見直し(糖質だけでなく脂質の管理も)
• 運動療法の個別指導
• 睡眠・ストレス管理
• 冬場の血圧対策
単に「血糖を下げるだけ」ではなく、“心臓を守るための治療”
を重視しています。■ 循環器内科専門医である院長からのメッセージ
「血糖が少し高い」「健診でHbA1cが上がった」といった段階から、
実は動脈硬化は静かに進行しています。
息切れ、胸の違和感、疲れやすさなど、わずかな変化でも放置しないことが大切です。
糖尿病と心臓病は密接に関連しているからこそ、早めの検査と適切な管理で未来のリスクは大きく減らせます。
南千住エリアで、糖尿病と心臓病の予防・早期発見に力を入れています。
何か気になる症状があれば、どうぞお気軽にご相談ください。参考文献
1.日本糖尿病学会編『糖尿病治療ガイド2024-2025』文光堂
2.American Heart Association. Diabetes and Heart Disease. Circulation. 2022;145:e663–e682.
3.Fox CS, et al. Cardiovascular disease risk in diabetes. Lancet. 2015.
4.Rawshani A, et al. Mortality and cardiovascular outcomes in type 2 diabetes. NEJM. 2018.
5.Mazzone T, et al. Treating diabetes to reduce cardiovascular risk. Diabetes Care. 2008.
文責:茂澤メディカルクリニック南千住
院長 茂澤 幸右(糖尿病学会所属・循環器内科専門医)