COLUMN

院長コラム

  • 院長コラム
    2026/01/13

    中性脂肪(TG)が高いだけ…本当に放置していい?

    ― LDLが正常でも安心できない理由を循環器内科専門医が徹底解説 ―

    健診で
    「中性脂肪が高いですね」
    と言われても、LDL(悪玉コレステロール)がそこまで高くなければ、
    「まあ様子見でいいか」と思われる方は少なくありません。

    外来でも実際にそういう相談は非常に多いです。

    ただ、TGが高い状態が続いている方ほど、将来の心臓・血管トラブルが起きやすい

    というのが、循環器内科として長く診てきた実感です。

    中性脂肪は「放置されやすい」検査値

    TGは、食事・お酒・睡眠・運動量で簡単に変動します。
    そのため「前回は高かったけど今回は下がった」ということも珍しくありません。

    だからこそ大切なのは、
    一時的な上下ではなく、高めの値が続いていないか
    という視点です。

    どのくらいのTGが問題になるのか(実際の目安)

    臨床では次のように考えています。

    150mg/dL未満
     → 原則、心配いらないことが多い
    150〜199mg/dL
     → 生活習慣の見直しで下がる人が多い
    200〜400mg/dL台
     → 脂肪肝・血糖異常・心血管リスクを一度整理したい
    500mg/dL以上
     → 急性膵炎のリスクが現実的に問題になる

    特に300mg/dL前後以上が何回も続いている場合、
    「LDLが正常だから大丈夫」とは考えません。

    TG高値と心血管リスク:論文ではどう示されているか

    TGそのものより重要なのは、
    TG高値が“血管に不利な代謝状態”を反映している点です。

    実際に、

    •非空腹時TGが高い人ほど、
     心筋梗塞・脳卒中の発症率が高い
    •TGから生じるレムナントコレステロールが多いほど、
     虚血性心疾患のリスクが上昇する

    ことが、大規模疫学研究で示されています。

    代表的な報告として

    •Nordestgaard BG, J Am Coll Cardiol
    •Varbo A, J Am Coll Cardiol

    では、LDLが同程度でもTG関連リポ蛋白が多い人ほど心血管イベントが多い
    ことが示されています。

    メイン画像

    脂肪肝とTGはほぼセット

    TGが高い方を診ていると、
    脂肪肝を合併しているケースは非常に多いです。

    脂肪肝は「肝臓だけの問題」ではなく、
    全身の代謝が乱れているサインであり、
    心血管疾患のリスクとも強く関連します。

    見逃してはいけない「膵炎リスク」

    TGが500mg/dL以上の状態が続くと、
    急性膵炎という、突然の激しい腹痛で救急搬送される病気のリスクが上がります。

    これは将来の話ではなく、
    今後数年以内に起きてもおかしくないリスクです。

    スクリーンショット 2026-01-13 16.10.49.png

    まず見直したい「食事」のポイント(現実的に)

    患者さんによくお伝えしているのは、次の点です。

    特にTGを上げやすいもの

    •甘い飲み物(ジュース・缶コーヒー・スポドリ)
    •菓子パン・お菓子
    •夜遅い炭水化物
    •アルコール(量より頻度が影響する人も多い)

    逆に意識したいもの

    •魚(特に青魚)
    •野菜・海藻・きのこ
    •白米を減らしすぎない「適量管理」

    「完璧な食事」より、
    続けられる形に落とすことが重要です。

    特に女性では卵やバター・チーズ・ヨーグルトなどの乳製品を過剰に取っている方も多いため、ここを控えるだけで数値は基準値まで下がるケースもあります。

    スクリーンショット 2026-01-13 16.10.55.png

    TGを下げるための「効率のよい運動」

    TGは、短時間でも“動く習慣” で反応しやすい項目です。

    おすすめしているのは、

    食後30分以内の10〜15分歩行
    •週2〜3回の軽い筋トレ(スクワットなど)

    「きつい運動」より、
    回数と継続を重視します。

    薬はいつ考えるのか

    生活改善をしてもTGが高値で続く場合や、
    膵炎リスクがある場合には、薬を検討します。

    フィブラート系(TG低下の中心)
    高純度EPA製剤(イコサペント酸エチル)
    •必要に応じてスタチン併用

    全員に同じ薬は使いません。

    スクリーンショット 2026-01-13 16.11.01.png

    当院の考え方

    当院では、
    数値だけを見て治療を決めることはしません。

    なぜTGが高いのか、
    この状態が将来どんな病気につながりそうか、
    そして その方の生活で続けられる対策は何か。

    南千住という地域柄、
    忙しく完璧な生活改善が難しい方も多いため、
    現実的な一歩を大切にしています。

    まとめ

    中性脂肪は軽く見られがちですが、

    高値が続いている場合は、将来の心臓・血管トラブルの重要なサインです。
    LDLだけで判断せず、
    一度きちんと整理することで、
    大きな病気を防げる可能性があります。

    最後によく臨床現場で患者さんから聞かれる質問をいくつか以下に載せます。

    よくあるご質問(Q&A)

    Q1. 中性脂肪が高いだけで、本当に治療が必要ですか?

    A. 必ずしも全員が治療対象になるわけではありません。
    ただし、中性脂肪が高い状態が続いている場合、脂肪肝や糖代謝異常、将来の心臓・血管の病気のリスクが隠れていることがあります。
    当院では、数値そのものより「背景に何があるか」を重視して判断しています。

    Q2. 健診で一度だけ高かったのですが、再検査した方がいいですか?

    A. 中性脂肪は食事やお酒の影響を受けやすく、1回の数値だけでは判断できません。
    条件(空腹かどうか)や過去のデータを見たうえで、必要な場合のみ再検査をご提案します。

    Q3. 中性脂肪が高いと、心筋梗塞や脳卒中になりやすいのですか?

    A. 中性脂肪そのものより、中性脂肪が高い状態が続いている体の環境が問題になります。
    LDLがそれほど高くなくても、内臓脂肪やインスリン抵抗性があると、動脈硬化が進みやすいことが分かっています。

    Q4. 食事や運動だけで、本当に中性脂肪は下がりますか?

    A. はい、下がる方は非常に多いです。
    特に、甘い飲み物や夜遅い食事を見直し、食後に少し歩く習慣をつけるだけでも反応するケースがあります。
    無理な制限ではなく、続けられる形が大切です。

    Q5. 中性脂肪が高いと、すぐ薬を飲まないといけませんか?

    A. いいえ。いきなり薬を始めることは多くありません。
    生活習慣を整えても高値が続く場合や、膵炎のリスクがある数値の場合に、薬を検討します。
    薬の種類やタイミングも、体の状態に合わせて慎重に判断します。

    Q6. 脂肪肝があると言われましたが、中性脂肪と関係ありますか?

    A. はい、非常に関係があります。
    中性脂肪が高い方では脂肪肝を合併していることが多く、脂肪肝は生活習慣病や心血管疾患のサインとして重要です。
    一緒に評価することで、将来のリスクを下げられる可能性があります。



    文責:茂澤メディカルクリニック南千住
    院長 茂澤 幸右(糖尿病学会所属・循環器内科専門医)