院長コラム
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院長コラム2026/04/02
お酒とコーヒーは体にいい?悪い? 循環器内科医が解説する血圧・脂質・血糖への本当の影響
「コーヒーは体にいいって聞くけど本当?」
「お酒は少しならむしろ健康にいい?」外来で非常によく聞かれる質問です。
結論から言うと
“条件付きで良いが、間違えると確実に悪い”
これが医学的に正しい答えです。つまり
「飲むか・飲まないか」ではなく
“どのくらい・どの状態で・誰が飲むか”が重要です。今回は循環器内科医の立場から
血圧
コレステロール
血糖という観点で
本当に体にどう影響するのかを解説します。コーヒーとお酒は「薬」にも「毒」にもなる
まず大前提として
コーヒーもアルコールも
体に対して作用する“薬理物質”です。だからこそ
適量 → 有益
過剰 → 有害という典型的な特徴を持っています。
コーヒーの主成分と作用
カフェイン → 交感神経刺激
クロロゲン酸 → 抗酸化作用
ポリフェノール → 血管保護これにより
一時的に血圧上昇
長期的には動脈硬化抑制という一見矛盾した作用が起きます。
アルコールの主な作用
血管拡張(短期)
交感神経刺激(長期)
中性脂肪増加
肝機能への影響つまり
「飲んだ直後は良さそうに見えるが
長期では確実に負担が蓄積する」これがアルコールの本質です。
血圧への影響:コーヒーは短期上昇、アルコールは慢性上昇
まず血圧への影響です。
コーヒーは“飲んだ直後だけ上がる”
カフェインの作用で
収縮期血圧:+5〜10mmHg程度上昇
します。
ただしこれは
30〜60分程度の一過性
であり、習慣的に飲んでいる人では
ほとんど問題になりません。むしろ複数の研究では
長期的には心血管リスクを下げる可能性
が示されています。アルコールは“じわじわ血圧を上げる”
問題はアルコールです。
少量なら
血管拡張 → 一時的に血圧低下
しかし継続すると
交感神経亢進
塩分摂取増加
睡眠質低下により
慢性的な高血圧の原因になります。
実臨床の感覚
外来では
「毎日飲酒している人は血圧が下がりにくい」
これはかなり明確です。
脂質への影響:アルコールは中性脂肪を確実に上げる
結論から言うと
どちらも“条件付きでプラスにもマイナスにも働く”
これが医学的に正しい理解です。コーヒーは「飲み方」で真逆の作用になる
コーヒーは一見すると健康に良いイメージがありますが、
脂質に関しては抽出方法によって作用が変わる点が重要です。特に問題になるのが
カフェストール(cafestol)という成分です。これはコーヒーに含まれる脂溶性成分で
▪ LDLコレステロールを上昇させる
▪ 肝臓でのコレステロール代謝に影響することが知られています。
フィルターあり vs なしでの違い
ペーパーフィルターコーヒー
→ カフェストールが除去される
→ LDLへの影響はほぼなし
フレンチプレス・エスプレッソ
→ カフェストールが残る
→ LDL上昇の可能性つまり
「コーヒー=健康に良い」ではなく
“どう淹れているか”が本質です。実臨床での印象
LDLが高い患者さんで
フレンチプレス愛飲
エスプレッソ頻回の方は
意外とコレステロールが改善しにくいケースがあります。逆に
ペーパードリップに変えただけで改善する例もある
これは実臨床でもよく経験します。
アルコールは中性脂肪を確実に上げる
一方でアルコールは
脂質に対してより明確な影響を持ちます。特に重要なのは
👉 中性脂肪(TG)を上げる作用
です。
なぜ中性脂肪が上がるのか
アルコールは肝臓で分解される際に
▪ 脂肪合成を促進
▪ 脂肪分解を抑制という働きを持ちます。
その結果
👉 中性脂肪が蓄積しやすくなる
量との関係
目安として
少量(ビール350ml程度)
→ 影響は軽度
中等量以上
→ TG上昇が顕著特に
▪ 毎日飲酒
▪ 夜遅い食事とセット
▪ 糖質の多い酒(ビール・日本酒)この組み合わせは
中性脂肪を確実に悪化させます。
「少量なら健康に良い」は誤解が多い
以前は
「適量の飲酒はHDLを上げる」
と言われていましたが、現在は
👉 心血管リスク低下効果は限定的、もしくはない
という見解が主流です。
特に日本人は
アルコール分解能力に個人差が大きい
少量でも影響を受けやすいため
“少しならOK”という考えは危険なこともあります。
当院の考え方
脂質異常症の患者さんには
単純に「控えてください」ではなく
▪ コーヒー → 抽出方法を見直す
▪ アルコール → 頻度と量を調整するという形で
現実的に続けられる改善を提案しています。
完全禁止ではなく
「どこまでなら許容できるか」を一緒に考えることが
長期的なコントロールには重要です。まとめ
コーヒー
→ 抽出方法次第でLDLに影響
アルコール
→ 中性脂肪を上げる作用が明確どちらも
👉 “適量”ではなく“飲み方と頻度”が重要
です。
血糖への影響:コーヒーは予防、アルコールは条件付き
ここは意外と誤解が多い部分です。
コーヒーは糖尿病リスクを下げる
大規模研究では
コーヒー摂取量が多いほど
2型糖尿病の発症リスクが低下
することが示されています。
理由として
インスリン感受性改善
抗炎症作用が考えられています。
ただし砂糖入りは逆効果
ここは非常に重要です。
缶コーヒーやカフェラテは
完全に別物です。
アルコールは低血糖と高血糖の両方を起こす
アルコールは
肝臓での糖新生抑制 → 低血糖
過食 → 高血糖を引き起こします。
特に
糖尿病患者では
低血糖リスクが上がるため注意が必要
です。
結局どれくらいならいいのか?循環器内科医の結論
では結論です。
コーヒー
1日2〜3杯
無糖
夜遅くは避ける👉 基本的には“推奨できる”
アルコール
男性:20g/日以下
女性:10g/日以下
(ビール500ml程度)👉 ただし
高血圧
中性脂肪高値
糖尿病がある方は
制限または減量が基本
です。
院長としての本音
正直に言うと
外来で状態が改善する人は
ほぼ例外なく飲酒量をコントロールできている方です。
逆に
「少しなら大丈夫」と思っている方ほど
なかなか数値が改善しません。
当院の考え方
当院では
「完全禁止」ではなく
継続できる生活
数値改善
将来リスク低減のバランスを重視しています。
迷ったら相談してください
コーヒーどれくらいならいい?
お酒やめた方がいい?
健診の数値どう見る?こういった疑問は
外来で非常に多いです。小さな疑問でも構いませんので
お気軽にご相談ください。参考文献
Ding M et al. Circulation. 2014
van Dam RM et al. N Engl J Med. 2020
日本高血圧学会ガイドライン2019
日本動脈硬化学会ガイドライン2022
American Diabetes Association Standards of Care 2024このコラムの執筆者
院長:茂澤 幸右
糖尿病学会所属・循環器内科専門医
循環器内科専門医として、糖尿病・高血圧・脂質異常症などの生活習慣病診療に従事。
血糖や血圧の管理だけでなく、将来の心筋梗塞や心不全を防ぐ視点を大切に、
日々の外来で患者さんと向き合っています。
このコラムでは、健診結果の見方や最新の医療情報などを、
外来で実際にお話ししている言葉で分かりやすく解説しています。
【経歴】
日本医科大学医学部 卒業
日本医科大学大学院医学研究科(循環器内科学)修了
【資格】
医学博士
循環器内科専門医
内科認定医
【所属学会】
日本内科学会
日本循環器学会
日本心臓病学会
日本糖尿病学会